サボテンと聞くと、トゲトゲがついた観賞用サボテンを思い浮かべると思うが、実は食べることができるのをご存じだろうか。料理店で偶然、日本で栽培されている食用サボテンと出会ったことをきっかけに興味が湧き、作り手を訪ねてみることに。するとその爽やかな味わいに驚かされたのはもちろん、さまざまな栄養やパワーがあることを知ることに。さらにメキシコ料理はもちろんだが、日本育ちだからか日本の料理とも相性抜群。いろいろな楽しみ方ができる夏にぴったりな食材を発見してしまった。
メキシコでは定番食材のサボテン。日本では愛知・春日井市が名産地
日本ではあまりなじみがないが、メキシコではサボテンは日常的によく食べる野菜のひとつ。サボテンには観賞用から食用まで何千という品種があるが、一般的に食用とするのはトゲが少なくなるよう品種改良された平べったい形をしたウチワサボテンと呼ばれるもの。噛むと少し粘り気のある食感で、さっぱりとした酸味があるのが特徴だ。メキシコの人は、肉料理に添えたりやタコスのサルサにしたりと、さまざまな料理でサボテンを楽しんでいるという。
そんな食用サボテンは日本でも栽培されていて、日本で一大産地となっているのが愛知県春日井市。暑い地域の植物のイメージがあるので意外に思うかもしれないが、戦後から観賞用サボテンの栽培が盛んに行われ、食用サボテンも作られてきた。今ではサボテンの街として、街を上げてPRを行っているほどだ。
春日井市から発信するサボテンブランド「太陽の場」
今回訪ねたのはそんな春日井市で、食用サボテンを広めたいと「太陽の葉」というブランドを立ち上げた、ジェイエヌエス株式会社の出口さん。もともと出口さんは健康食品を製造販売する会社を経営していた。そのなかで地元の名物であるサボテンの栄養価に着目し、サボテンを使ったサプリメントや加工品の製造開発を手掛け、春日井市内にアンテナショップも立ち上げた。
飲食店や小売店にサボテンの加工品を販売していくなかで、さまざまな後押しをもらい、加工だけでなく、サボテンの栽培もスタートさせる。使われていなかった畑を開拓し、試行錯誤しながら自分たちでも数年後には露地栽培で安定的にサボテンを育てることに成功。日本・春日井育ちのサボテンを広めようと「太陽の葉」というブランドを立ち上げた。除草剤などの薬品を一切使わず、使用するのは有機肥料のみ。里山の自然を活かした栽培方法が最大の特徴だ。
「ウチワサボテンの中でもバーバンク種と呼ばれるメキシコで食べられているものと同じサボテンを栽培しています。このバーバンク種にはトマトと同じくらいのβ-カロテン、牛乳の2.7倍のカルシウム、白菜の2倍の食物繊維等、さまざまな栄養素が含まれていて、野菜と果物のいいとこどりをしたような食材です」という出口さん。水溶性食物繊維が豊富なので、整腸作用があり、独特の酸味にはリンゴ酸やクエン酸などが含まれていて、夏バテ防止にも役立つので夏にはぴったりだ。
栄養価は高いが、約95%が水分というサボテン。健康食品で培ってきた技術を活かし、自社で栽培したサボテンを使ったパウダーやピューレ、発酵エキスを製造し、サボテンの栄養価を手軽に摂取できるさまざまな商品を開発していく。そして健康食品以外にも、サボテンパウダーを使ったキャンディーや麺のほか、発酵サボテンエキスを使ったソーダやクラフトビールなど、日常の食としてやお土産として親しんでもらえる商品も開発していった。
「特に夏は繁忙期です。生命力あふれる植物なので、夏はぐんぐん茎が育ち、柔らかい新芽が楽しめるシーズン。それを求めて東京や大阪など全国からオーダーが入りますが、メキシコ料理店だけでなく、日本料理店やフランス料理店などからも注文をいただきます」という出口さん。夏場はほぼ毎日収穫しているので、注文があれば採れたてのものを発送する。実店舗の店頭でも購入可能で、近隣のスーパーマーケットに卸しているので地元の人は気軽に購入することも可能だ。通販サイトでは、サイズにもよるが2〜3枚程度ならポスト投函できるサイズで送ってくれる。
サボテン料理のプロの料理を参考に、サボテンの楽しみ方を考察
地元飲食店にサボテン料理を作ってもらうよう働きかけも行ってきた出口さん。今では中華料理店、和食店、和菓子店と、さまざまなお店でサボテングルメが販売されるようになり、街の名物としてサボテンが広く知られるようになっていく。
「太陽の葉」が飲食店でどんな使われ方をしているのかを具体的に聞いてみると、和食店では豚バラ肉とサボテンを串にさして焼いた「サボマ」や、巻寿司の中に細長く切ったサボテンを入れた「あっさりサボテン巻き」、和菓子店ではペーストのサボテンを入れた「さぼてんういろ」、中華料理店では餡に刻んだサボテンを入れた「サボテンギョウザ」なども。フランス料理店では、爽やかな酸味を活かしたデザートに仕立てられ、地元愛知とサボテンの魅力を感じられる一品に。その爽やかな酸味と粘り気がのど越しをよくしてくれるので、どの料理もとても食べやすい味に仕上がっているという。
早速サボテンを購入して自分でも調理を試みた。まずは下ごしらえ。ウチワサボテンは食用に品種改良されたサボテンなのでトゲは少ないが、もちろんトゲはある。しかも一つのトゲ座から四方にトゲが出ているので触らないようにゴム手袋などをして柔らかいたわしなどでこすりとっておこう。「太陽の葉」では出荷前に、トゲを取り除いているが、残っているものがないか念のため確認しておこう。
トゲが生えていたトゲ座の部分は少し固いので、トマトのヘタ取りや魚の骨抜きなどを使って取り除くと食感がよくなる。さらに側面、表面の薄皮をピーラーなどで剥いておく。「太陽の葉」は露地ものなので、時期によって表面の皮の厚みが異なるが、5~9月にかけて育つ新芽は比較的柔らかいので、刻んで食べるならば薄皮はそのままでもOK。食感が気になるなら、薄く剥いてから使おう。
下ごしらえしたサボテンを、まずは生でそのまま食べてみる。ほのかな酸味と青い香りが印象的だ。噛むと粘り気があることがよくわかる。オクラやメカブのような食感だ。メキシコでは肉料理に必ずといっていいほど添え、焼いたものや細かく刻んだサルサ、スライスしたサラダなど多彩な調理法で食べられているそうなので、まずは定番の食べ方を試してみる。
牛ヒレ肉のステーキに添えたのは、サボテンのほか、パクチーや赤玉ねぎ、トマトを刻み、オリーブオイルと塩、レモン汁、胡椒と合わせて作ったサルサ。サボテンをそのまま焼いたステーキも添えてみた。食べてみるとサボテンは特にトマトと相性がよいと感じた。出口さんも、サボテンには酸味があるので酸味のある食材と合わせると、酸味が重層的になり深みのある味になるという。
「太陽の葉」は味も優しく、肉厚で独特の粘りや食感が楽しめるので、実は和食にも合う。出口さんは刻んだサボテンと生卵や薬味をのせた、卵かけごはんも美味しいと教えてくれた。さらにさっぱりのど越しよく食べられたらと、サボテンを細かく刻んで、蕎麦にかけた「ぶっかけ蕎麦」を作ってみる。サボテンの酸味が出汁の旨みのアクセントになり、のど越しの良いものが食べたい夏にぴったりの一品になった。
将来は食料危機を救い、日本でも定番に?スーパーフード、サボテン
サボテンに豚バラ肉の薄切りを巻いて、衣を付けて上げたり、下ゆでしてピクルス液に漬けてピクルスにしたり、ゴーヤチャンプルーや麻婆豆腐のゴーヤや豆腐の代わりにサボテンを使ってみたりと、和洋中さまざまな料理に違和感なく取り入れられたサボテン。夏はもちろんだが、寒い冬は肉厚になり、粘りも強くなり、コクや旨みも増すのでぜひ冬も食べてほしいという出口さん。メキシコのサボテンにはない味が楽しめるのは四季がある日本で育てているからこそ。出口さんはメキシコでの食べ方とはまた違った、日本のサボテンだからこそ美味しい食べ方を追求し発信し続けているので、「太陽の葉」の公式サイトで紹介されている食べ方もぜひ参考にしてみてほしい。
「太陽の葉」は、自然に近い環境下の露地栽培で無農薬。日本ではハウス栽培が多い中、環境負荷の少ない栽培方法は今の時代に注目すべきだと思う。そしてサボテンは寒さにも暑さにも強く厳しい環境でも育つことから、近年では食料危機を救う植物として注目されており、日本でもスーパーで普通に買えるようになる日が、そう遠くはないのかもしれない。そんな未来を見据えたサボテン「太陽の葉」。ぜひ気軽に取り寄せて、夏を元気に過ごすためのパワーフードとして楽しんでみてほしい。
太陽の葉 オンラインストア
CURATION BY
古いものや熟成したものと愛娘に目がない、フリーライター。チーズ好きが高じて、「チーズプロフェッショナル」の資格も取得。カメラ片手に町や人、美味しいものを訪ね歩く日々を過ごす。