仙台の「いたがき(ITAGAKI)」は、創業130年以上の歴史を持つ老舗の果物専門店。仙台市民にとっては「高級フルーツといえば、いたがき」と言われるほど、深く親しまれている。店頭にはフルーツをふんだんに使用した華やかなケーキやタルトなどのデザートが並ぶが、なかでも私の姪っ子がおねだりするのが「フルーツインゼリー」だ。透明なゼリーの中に、ゴロゴロとした大きめのカットフルーツが贅沢に閉じ込められており、キラキラと輝く姿はまるで宝石のよう。仙台市民に愛され続ける果物専門店のゼリーは、どのように作られているのだろうか。
高級フルーツといえば、いたがき。老舗果物店が、仙台で絶大な信頼を集める理由
「いたがき(ITAGAKI)」は、明治25年に創業した130年以上の歴史を持つ老舗の果物専門店。「高級フルーツといえば、いたがき」と言われるほど、仙台市民に深く親しまれている。現在は果物の販売にとどまらず、ケーキやタルト、ゼリー、ジューススタンド、さらにはカフェでの食事まで、フルーツを美味しく楽しむための多彩なスタイルを提案。今回は、同社の取締役 板垣 亜紀子さんにお話を伺うことができた。
仙台市民から絶大な信頼を寄せられている理由は、確かな目利きによって選び抜かれた、最高品質のフルーツが揃っているからだと板垣さんは言う。全国から厳選される果物は、まさに一級品ばかりだ。そのため贈答品としての信頼も非常に高く、「いたがき」のフルーツはお見舞いやお中元、お歳暮の定番として重宝されている。
板垣さんによると、同店がフルーツを主役にしたスイーツ開発に乗り出したのは、2002年の仙台三越店への出店がきっかけだという。さらに、2011年の東日本大震災の翌年には本店を建て替え、カフェを併設。時代や環境の変化に合わせながら、果物の物販だけにとどまらない、フルーツを美味しく食べるための新しいスタイルを確立させてきた。
すべては最高の鮮度と安心のために。仙台市内で毎朝手作りされる、妥協なきスイーツ
同店のスイーツは、毎朝製造され店頭に並べられる。その高い鮮度を徹底して保つため、あえて本店から離れた場所には出店せず、店舗のほとんどが仙台市内となっている。店内には経験豊富なパティシエが在籍しており、フルーツを主役にした新しい美味しさを届けるため、日々熱心なレシピ開発が続けられている。
お菓子作りに欠かせないバターや卵、小麦粉、生クリームなどは、選び抜かれた上質な素材のみを使用。原材料の価格高騰が続く状況下でも、決して品質を落とさないよう、並々ならぬ企業努力を続けている。
また、素材へのこだわりは「身体へのやさしさ」にも及ぶ。できるだけ保存料などの添加物を使わないよう試行錯誤を重ねている。そして、フルーツ本来の味わいを最大限に引き出すため、甘さのバランスを緻密に計算しながらスイーツ作りに励んでいるそうだ。
ショーケースの中で一際目を引くのが、「フルーツインゼリー」だ。私の最初の印象は、まるで「フルーツの標本」。キラキラとしたゼリーの中に美しく浮かぶフルーツの姿が、強く記憶に残っている。
このゼリーは熱を加えず、生の果実をそのまま閉じ込めている。レモンベースのゼリー液は、保存料や香料を一切使用していない。そのため賞味期限は3日程度と短い。今回は特別に製造の現場を見学させていただいた。
みずみずしい果実をそのまま閉じ込めた、贅沢な「フルーツインゼリー」
「フルーツインゼリー」は、定番の「ミックス」のほか、季節ごとに旬のフルーツを使ったゼリーも登場する。ラインナップは時期によって変わり、冬から5月頃まではイチゴ、夏はメロンやマンゴー、夏から秋にかけてはブドウ(巨峰、シャインマスカット)などが並ぶ。また、スポット企画として、旬に合わせてスイカなどのフルーツが採用されることもあるという。フルーツの状態は季節によって変化するため、その時々でしか味わえない一期一会の味わいを楽しめる。
実際に「ミックス」をいただいてみると……、なんとイチゴが一粒まるごと入っていてびっくり! レモンベースのゼリーはさっぱりとした爽やかな甘みで、主役のフルーツを引き立てる名脇役。果実をそのままかじっているような贅沢な食べ応えがありながら、つるんとした喉ごしの良さで驚くほどするすると食べ進められる。スプーンを進めるごとに次々と違うフルーツが現れるため、「次は何が出てくるかな?」と楽しみながら味わえるのも魅力だ。
板垣さんから「お皿に盛り付けるときれいでおすすめ」と伺い、さっそくデザート用の器に盛り付けてみることに。ガラス器の中でキラキラと輝くゼリーが、フルーツのみずみずしい美しさを一層引き立ててくれた。友人が集まる日の、ひんやりと涼やかな夏のおもてなしスイーツとしても喜ばれそうだ。
また、翌日に「メロン」や「マンゴー」をいただいてみると、ゼリーにフルーツの濃厚な果汁がじっくりと行き渡って、香り豊かに。作りたてのフレッシュさとはまた一味違う、深みのあるまろやかな味わいを楽しむことができた。なかでも「マンゴー」は、口に入れた瞬間になめらかな果肉がほどけるように広がり、熟した果実ならではの濃密な甘みを存分に堪能できた。その贅沢なおいしさに、思わずうっとりしてしまう。
「フルーツインゼリー」は、ケーキを取り扱う全店舗のほか、「いたがきオンラインショップ」でも購入できる。特に母の日や夏の贈り物(お中元)として人気が高く、そのみずみずしいおいしさに魅了され、首都圏から取り寄せるリピーターも多いという。
フルーツの魅力をさらに身近に、「いたがき」の新たな挑戦
創業130年の「いたがき」が、今後力を入れていきたいと考えているのが焼き菓子の開発だ。昨年発売したアソート缶は好評を博しており、レモンクッキーやフロランタン、ジャム入りクッキーなどを詰め合わせた商品は、発売後すぐに品切れとなったという。そうした反響を受け、今後はより一層「いたがき」らしさを感じられるオリジナルの焼き菓子を増やしていきたいと板垣さんは話す。
目指しているのは、果物専門店ならではの魅力を生かした商品づくりだ。果物の風味を感じられる味わいはもちろん、贈り物としても喜ばれるようなデザイン性の高いパッケージにも力を入れていきたいという。
長年にわたり支えてくれている顧客との関係を大切にしながら、新たな世代へのアプローチにも取り組んでいく。現在は既存の顧客層を中心に厚い信頼を得ている一方で、近年は併設のカフェを中心に若い世代の利用も増えているという。そうした層にも果物の魅力を知ってもらうための取り組みを進めていく考えだ。
ただし、店舗数を増やしたり事業を大きく拡大したりすることが目的ではない。「これまで築いてきた品質やサービスを大切にしながら、商品の充実や店舗の魅力向上に力を注ぎたい」と板垣さんは話す。
果物のおいしさを何よりも大切にしてきた「いたがき」。その想いはこれからも変わらない。焼き菓子やカフェなど新たな挑戦を重ねながらも、「良い素材を使い、果物本来の魅力を届ける」という創業以来の姿勢を守り続けていく。
大切な人への贈り物としてはもちろん、自分へのご褒美としても、果物を使ったスイーツを楽しんでみてはいかがだろうか。
くだものは いたがき
CURATION BY
宮城県仙台市。中学受験の受付事務を退職後、仙台にて行政関係の事務職や、東京・仙台を拠点とするWeb系の広告制作会社を経て、現在はフリーランス。行政でのWebメディア企画運営やWeb制作会社での経験を基に活動中。Webメディアで執筆、Web制作、SNSの運用、PR業務など。