闇を照らすかがり火とともに受け継がれる鵜飼の文化
鵜飼とは、鵜という水鳥を巧みに操り、魚を捕らえる日本の伝統漁法だ。歴史は古く、1300年以上前の『日本書紀』にも記録が残るほどである。なかでも岐阜県・長良川の「ぎふ長良川の鵜飼」は全国的に知られ、織田信長や徳川家康もその美しさを愛したといわれている。
夏から初秋にかけて行われる夜の鵜飼では、かがり火が川面を照らし、鵜匠(うしょう)と呼ばれる漁師が巧みに鵜を操って鮎を捕る。鵜飼で獲れた鮎は、鵜が川中を泳ぎ回って追い込むことで傷が少なく、香りも身質も良い“極上の鮎”として珍重されているという。
闇夜に揺らめく火に照らされ、鵜の白い羽がふっと浮かび上がる光景は実に幻想的だ。その美しさは、古くから多くの文人や旅人の心をとらえてきたように思える。岐阜の鵜飼は、自然と人、伝統と暮らしがともに息づく象徴的な文化として、今も変わらず受け継がれている。
一枚一枚丁寧に。老舗の技術と心意気で焼き上げる
こうして誕生した、鵜籠を模した「鵜飼せんべい」は、甘いものが貴重だった時代に評判を集め、皇室への献上品にも選ばれている。以来、長良園の味は地元で大切に受け継がれ、岐阜の銘菓として親しまれてきた。
近年では、伝統を受け継ぎながらも時代に合わせたリブランディングに取り組み、若い世代や観光客にも手に取りやすい味・食感・デザインへと生まれ変わった新ブランド「鵜飼せんべい Lukka(ルッカ)」を展開。
岐阜の風土や文化を次の世代へとつなぐ、伝統と革新を両立する地域の菓子屋として注目が高まっている。
だからこそ、その配合や焼き加減が味を大きく左右する。職人は毎日、気温や湿度、砂糖の状態、火加減を見極めながら、細やかな調整を続けている。
とりわけ今回の新ブランド「Lukka」で登場した「ショコラ味」は、開発の過程でカカオバターの油脂が鉄板に残りやすく、焼きの工程に支障をきたすこともあったという。それでも改善と調整を重ね、新しい味を探り続けた結果、ようやく今回の発売にこぎつけた。
素材の魅力を生かした、2つの味わい「和三蜜」と「ショコラ
また、岐阜県産の小麦粉や、日本国内で育種された純国産鶏「もみじ」から産まれた卵「もみじたまご」など、選び抜いた素材を使用している。
はちみつの穏やかな甘みがじんわりと広がり、和三盆を思わせる上品なコクがそっと口に残る。ふわりと漂う余韻まで楽しめる一品だ。
カカオパウダー、カカオマス、カカオバターという三つの主要原料を丁寧に掛け合わせることで、香料に頼らずとも自然なチョコレートの香りを引き出している。
カカオニブは、あえて粗めに砕いた粒を残したという。噛むたびにカカオ本来の香りと食感が立ち上がり、心地よい“余韻のあるおいしさ”が広がる。
“せんべい”という名に似合わず、口に入れるとまるでクッキーのよう。コーヒーともよく合い、食感はクッキーよりも軽やか。軽い後味で、気づけばもう一枚、と手が伸びてしまう。
懐かしくも、新しい。長良川の情景を描き出す、Lukkaの世界観
手がけたのは、イラストレーターの勝山八千代さん。実際に岐阜の地を訪れ、川の匂いや、街に息づく歴史の気配を全身で感じながら、ひと筆ずつ心を寄せて描き上げたという。
そのタッチは、どこか懐かしく、けれど新しい。古き良き岐阜の風景を大切にしながら、現代の空気感もそっと宿したような温かいかわいらしさがある。手に取った瞬間、まるで旅の1ページを開くようなぬくもりがふわりと伝わってくる。
旅のしあわせと情景をひとくちに。大切な人へ気持ちを届ける
なお、売り上げの一部は「岐阜長良川鵜飼保存会」に寄付される仕組みになっており、商品を手にすることが、地域の歴史や文化を支える一助にもなっている。
鵜飼を訪れる際は、長良川沿いにある「鵜飼ミュージアム」にも立ち寄ってみてほしい。歴史や背景を知ることで、鵜飼の魅力がより深く感じられ、夜の川面に揺れる幻想的な光景が一層心に残るはずだ。
そして、旅の余韻や岐阜の魅力を誰かと分かち合いたいときには、「鵜飼せんべい Lukka」を。想いをそっと添えて渡せば、受け取った相手にも小さな余韻が生まれるはずだ。