Vol.260

FOOD

13 AUG 2021

有機野菜とは何?定義を知って、安心と健康を野菜選びの基準に

「有機野菜」や「オーガニック野菜」という言葉を耳にしたり、実際に商品を手にしたりしたことがある人も多いだろう。有機野菜 とは、農林水産省が定める日本農林規格(JAS規格)の中の「有機JAS規格」に認定された野菜のことを指しており、健康志向の人から注目を集めている。 ここでは有機野菜とはどんな野菜を指すのか、他の栽培方法との違いは何かを解説しながら、メリットやデメリット、購入方法についてお伝えしたい。まずは有機野菜の定義から紹介しよう。

「有機野菜」とは何か。オーガニック野菜との違いは?

有機野菜と名付けるには厳しい条件をクリアしなければならない

有機野菜=オーガニック野菜

英語のorganicは日本語で「有機的」と訳される。つまり、「有機野菜」と「オーガニック野菜」は同じ意味を指しているのだ。また、日本では有機野菜といえば「無農薬の野菜」をイメージしがちだが、実は無農薬の野菜が有機野菜というわけではない。

畑でとれた野菜を有機野菜として売り出すには厳しい基準があり、その基準は国によって異なる。国際的な規模で 有機農業を推進している国際NGOのIFOAM(国際有機農業運動連盟)は「生態系」「健康」「公正」「配慮」の4項目をオーガニックの原則として掲げている。

有機野菜は「有機JASマーク」が目印

日本で有機野菜と名付けるには、農林水産省で定められた認定基準を満たさなければならない。 この認定を受けた野菜には、有機JAS規格に適合している証明として「有機JASマーク」をつけることが可能となり、同時に貼付が義務付けられる。野菜を購入する際に、それが有機野菜かどうかわからない場合は、有機JASマークがついているかどうかに注目するとよいだろう。

農林水産省が定めたJAS規格に適合する野菜

では、有機JAS規格に適合する野菜とはどんなものなのだろうか。有機JAS規格の基準は、全5条からなる「有機農産物の日本農林規格」によって定められており、中でも第4条の「生産の方法についての基準」には栽培する場所や種子の扱い、栽培から出荷までの管理方法などについて詳しく取り決められている。

わかりやすいものを挙げると、「有機肥料で土作りをおこない、禁止された農薬や化学肥料を種まきや植えつけの前の2年以上使用していないこと」「栽培中も禁止された農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術を使用していないこと」など。生態系や自然環境に極力負荷を与えないような状況で栽培された農作物であることが、適合する目安の1つになっているのだ。

申請した野菜が基準を満たして有機JAS認証を取得し、有機JASマークを貼ることでようやく、「有機野菜」や「オーガニック」などの表記が可能になる。また、有機野菜には無農薬というイメージがあるが、条件をクリアすれば、有機JAS規格で認定している農薬は使用してもよいとされている点は確認しておきたい。

有機栽培と、よく聞く他の栽培方法の違いとは

有機栽培以外にも、さまざまな栽培方法が存在している
農作物の栽培には、有機栽培以外にもいくつかの手法がある。ここでは「特別栽培」と「自然農法」に注目する。

農薬の使用量を制限しているのが「特別栽培」

世の中で流通している商品には、さまざまな表示が義務付けられており、その中の1つに「特別栽培農産物」がある。これは、平成4年に農林水産省によって制定された「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」を満たしているものを指す。ガイドラインでは、節減対象農薬や化学肥料の使用量が、生産地域の慣行レベルの5割以下で栽培されたものが「特別栽培農産物」であると定義されている。

以前は、野菜に「無農薬野菜」という表記が使われていることもあったが、平成16年に食品への「無農薬」や「減農薬」などの表記は禁止された。これは飛散してくる農薬や、土に残留している肥料の制限はできず、農薬がまったくかかっていないことを証明できないからだ。

「自然農法」も注目を集めている

近年少しずつ注目を集めているのが「自然農法」だ。自然農法は80年以上前からおこなわれている歴史ある農法で、不耕起(耕さない)・不除草(除草しない)・無施肥(肥料を与えない)・無農薬(農薬を使わない)を基本とする栽培方法のことをいう。

自然農法は実践している人によって少しずつ方法が異なるため明確な定義がなく、似ている方法も含めると数多くの手法が存在する。ただし、「自然が本来持っている力を最大限に生かして作物を栽培する」という基本的な考え方は共通している。人間が手を加えなくても質のよい肥えた土は存在するし、植物は自然の力を借りて力強く育っていく。それを尊重する農法といえるだろう。

有機野菜がもたらすメリットは健康以外にも

カラダが喜ぶ、みずみずしい有機野菜

安全・安心に野菜を食べられる

日本で流通している食品は食品衛生法の基準をクリアしており危険性は少ないが、有機野菜はさらにリスクが低い食材といえる。

農林水産省によると、遺伝子組み換え技術を使用した食品は、安全性が確認されたもののみ栽培、流通、加工等を認める仕組みを導入しているそうだが、それらの食品を長期間食べ続けた場合の安全性はまだ確認されていない。しかし、有機野菜には遺伝子組み換え技術を使用した農作物は含まれない。また有機野菜は農薬の使用が制限されているため、残留農薬が少なく安心して食べられるのもうれしい。

自然環境や農家の健康が守られる

有機野菜の栽培は食べる側だけではなく、自然環境や農家にもやさしいのが特徴だ。農薬の使用は、土の中の微生物や土壌生物などの生態系を脅かし、作物にとってよい環境をもたらす微生物まで駆除してしまう可能性があるが、有機栽培は最低限の農薬しか使わないので生態系への影響は低いと考えられる。

また、農薬を散布する作業中に飛散した農薬を吸い込むことで、生産者の健康被害のリスクが高まる恐れもある。農薬の使用を最小限に抑える有機野菜の栽培は、農家にもやさしいといえるだろう。

栄養価が高く野菜本来の味を楽しめる

化学肥料を多く用いて育てられた野菜は栄養価が高いように感じるかもしれないが、実はそうではない。有機野菜のほうが栄養価は高いのだ。有機野菜は一般に流通している野菜に比べて、体内の活性酵素を除去するはたらきがあるフェノール系の抗酸化物質が65%多く含まれるといわれている。有機野菜に抗酸化物質が多く含まれる理由は、野菜が育つ過程で害虫や病気から自らを守ろうとして生成しているためだと考えられている。

また、有機野菜は一般的な野菜のように品種改良によって独特のクセを取り除かれていないので、野菜本来の濃い味を楽しめるのが特徴だ。食べてみると、通常の野菜に比べて甘くてみずみずしいのがわかるだろう。有機野菜には、濃い味付けをしなくてもおいしく食べられる魅力がある。さらに、皮まで食べられる野菜が多いため、環境にも配慮できる。

有機野菜が一般化しない理由とは

形が不揃いでも、おいしい野菜を選びたい

一般栽培と比較すると少し価格が高め

有機野菜の栽培は、有機肥料を作るところから始まるために膨大な時間や手間がかかる。さらに、農薬をあまり使用しないため、病虫害を抑えるために人が手をかけなければならない。そのため人件費がかかり、結果として一般野菜に比べて価格が高くなってしまう。

不揃いな野菜ができやすい

日本で流通している野菜は形がよいものが多く、おいしそうな印象を受ける。しかし、有機野菜は許可のない化学肥料や害虫対策の農薬を散布しないため、育ちや見栄えがよいとは限らない。個体差が大きく、野菜の見た目を気にする人は購入をためらうかもしれない。また、箱に詰めて出荷するにも、形が不揃いでは梱包がむずかしいという問題もある。

まだ流通量が少ないので入手がむずかしい

有機野菜の栽培には手間がかかるため、どうしても生産者の数が少なくなる。あまり生産されないことで流通量が少ない状態が続くと、野菜売り場でも有機野菜が占める面積は狭くならざるを得ない。このように入手しにくい状況では、有機野菜が消費者のあいだで一般化するのはむずかしいのかもしれない。

通販や宅配で手軽にオーガニック野菜を食卓へ

種類豊富な有機野菜が届く通販や宅配がおすすめ
では、有機野菜を日常に取り入れるにはどうしたらいいのか。おすすめしたいのは、通販や宅配などで購入すること。通販や宅配なら、農家直送品やセット販売品などがあるため、希望の野菜が手に入りやすいのがメリットだ。自宅にいながら厳選されたフレッシュな野菜が手に入り、買い物に行く手間が減るのは、なんと便利でうれしいことだろう。

通販や宅配業者を選ぶ際には、取扱商品や注文する量、宅配エリア、有機栽培の品質に着目しよう。また、時間指定や鍵付き・冷蔵の宅配ボックスが使用できるかどうかなど、配送方法に融通が利く業者を選ぶことも大切だ。有機野菜の通販や宅配業者はたくさん存在しているので、お試しセットがある場合はぜひ利用してみてほしい。

有機野菜を選ぶことは、安心を食卓に並べること

食卓に色とりどりの有機野菜を取り入れよう
有機野菜と名付けられた野菜は、厳格な基準をもとに手間をかけて生産されている。食の安心にこだわりたい人や、健康志向の人、日々の暮らしを大切にしたい人には、ぜひ有機野菜をおすすめしたい。

有機野菜はまだ流通量が少ないものの、便利な宅配サービスを利用できることもあるため、調べてみるとよいだろう。安心とおいしさの追求、そして環境や生産者への配慮も叶う有機野菜を取り入れて、毎日の食卓を少しだけアップデートしてみてはいかがだろうか。