スムージーのパーソナライズに隠されたこだわりや、美味しさの秘密を、株式会社Greenspoonの小池優利さんに取材した。
自分にあったスムージーが届くサブスクリプションサービス
スムージーキットは、攪拌前の材料を1食毎に詰め合わせて冷凍した状態で届く。平たくいえば、カットされた野菜とフルーツの詰め合わせだ。
スムージーの種類は2020年5月時点で25種類。すべて管理栄養士監修のもと、栄養素や味わいを熟考し開発されている。
Webサイトでの診断は、大きく3つのステップに分かれていた。ステップ1では、自覚している悩みや、生活の状況についての選択項目があり、ステップ2ではそれぞれの課題についての深掘りした質問が行われる。ステップ3では、アレルギーや好き嫌いについての質問だ。
「より個人の体や生活の悩みに適応するスムージーをオススメするために、睡眠時間や、野菜不足が続いている期間など細かなことも、アンケート項目に加えています」と小池さん。
結果画面では、ユーザーが抱えている問題を解決するために必要な食材リストと、それを適えるスムージーが紹介される。オススメされたスムージー以外のものを選ぶこともできるので、味への不安がある人にとってのハードルも低い。
「食べ物なので好き嫌いはあるし、アレルギーをお持ちの方もいます。どんな方にも安心してスムージーを楽しんでいただきたいので、お客様の嗜好にあったものを選んでいただけるように配慮しました」
GREEN SPOONは、世間がスムージーに対して抱えるネガティブなイメージを覆しながら、期待を超えてくるサービスだ。その起源には、開発チームが掲げる強い想いがあった。
このプロダクトを起案した代表・田邊友則さんは、かつて大手IT企業に勤務していた。日々の仕事に追われる毎日、運動も食事もおざなりで、体も健康とは程遠い状態だったという。
その会社を退職したのち、フリーランスとして働きながら世界旅行に出かけた。多様なライフスタイルに触れる中で、重大な発見を得ることになったという。それは、体のコンディションを整える習慣と、自己肯定感の高さに関連があるということだ。
海外には、運動や食事に気をつかっている人が多く暮らしている。そういう人はきまって、高い自己肯定感で満たされていた。毎日ベストな自分に近づいているという実感がそうさせるのだろう。
田邊さん自身、そのライフスタイルを取り入れることで、心も体も変わっていったという。日本に帰国後、創業メンバーとともに打ち立てた「自分を好きでい続ける人生を」というビジョンには、食のセルフケア習慣を作ることで自己肯定感の高い人を増やしていこうという想いが込められている。
「健康不安や、より良い食事への興味を持っている人は増えています。GREEN SPOONは、お客様に必要な栄養素をお伝えしたり、美味しさや楽しさを感じてもらうことで、食のセルフケア習慣を支えていきたいです」
スムージー作りを通して、食の彩りを愉しむ
スムージーは冷凍された状態で届けられる。1食分は200gで、想像していたよりもずっしり重みがあることに、期待が膨らむ。
容器に、牛乳、豆乳、水など好みの水分を入れる。分量は150〜200ml程度で、材料がひたひたに浸かるくらいが目安だ。
この時、容器の底面に隠れていた材料を目で確認できるのも魅力的なポイント。どんな野菜、フルーツが入っているのかを知ることができるのは、既製品のスムージーにはない楽しさだ。
ミキサーのスイッチを押すと、材料が砕かれ全体の色がみるみる変わっていく。1分間程度撹拌すると、満遍なく混ざり合った。
朝一番に、体にいいことをする
カップの側面に示されている原材料はケール、コジベリー、バナナ、オレンジ、グリーンピース、セロリ、甘酒と、組み合わせを見ただけでは味が想像できないラインアップだ。スムージーに同梱されている冊子には主な栄養素も記載されている。この場合、ビタミンB1、ビタミンC、鉄、アミノ酸が摂取できるようだ。これらは肉魚不足を補う栄養素で、疲労回復に効果的な組み合わせである。
早速ミキサーで撹拌してみると、徐々に黄色味がかったグリーンスムージーが完成した。
ケールやグリーンピースの苦みや青くささが、フルーツの酸味によって相殺され、甘味と深みだけが残っている。さらに、セロリの清涼感と、甘酒によるクリーミーな甘味が追加されて、爽やかさと深みを併せ持った一杯としてまとまっている。
素材が本来持つ味わいだけで、バランスのとれた甘味や、鮮やかな色合いを表現することの難しさは想像に容易い。材料の数が増えれば増えるほど、味や色は複雑になっていく。
無添加でも多くの人に受け入れられるスムージーづくりを叶えた背景には、素材の組み合わせへの徹底したこだわりがあったという。
「相性のいい材料を研究したり、甘酒、アガベシロップなどの自然な甘味をうまく取り入れるなど、リリースまでに試作を繰り返しました」
きっとどの材料が欠けていても、この繊細な味わいにはならなかっただろうと思う。私はこんなに完成度の高いスムージーをかつて飲んだことはなかった。
いつものリズムが崩れた生活にテコ入れをするために、実際の暮らしにGREEN SPOONを取り入れてみた。
初日からいろいろな変化を感じた。寝ぼけた体に、シャリっとしたスムージーを流し込んだときの、冴えるような感覚。体に必要な栄養素をしっかりと取り込んでいるという実感。一日のはじまりに、ご褒美感のある食事ができたことで、その日の行動に心地よいテンポが生まれた。
可愛くパッケージングされたスムージーは、ちょっとしたギフトのようにも感じる。平凡な一人暮らしの中で、特別感のある食事を心の底で求めていたのかもしれない。GREEN SPOONを食べた朝はいつも、誰かに支えてもらっているような心強さを感じることができた。
実際、おうち時間を楽しく過ごすためにGREEN SPOONを手に取るユーザーが急増しているという。小池さんがユーザーから得たフィードバックの中で、特に注目したのは、同居者とのコミュニケーションが増えたという声だ。
GREEN SPOONの1食分は大きめのタンブラーになみなみ注がれるくらいの分量で、人によっては多いと感じることもあるだろう。それくらい大容量なので、家族やカップルで分け合うユーザーがかなりいるのだという。
「スムージーを選んだり、作ったりする過程から、味わうところまで、同居している方とコミュニケーションを取りながら、楽しんでいただけているという声をたくさんいただいています。一人暮らしの男性からも人気が高いです」
生活のクオリティを高める、気軽なツールとして
なお、専用のマイページでは、ユーザーの悩みや生活の状況に合った野菜やフルーツが一覧で確認できる他、最近の注文で届けられたスムージーに含まれている野菜やフルーツが示されている。健康的な食事を理解する上で、勉強になる内容だった。
GREEN SPOONは、自分の食事の実態や、食べ物が体にどう影響していくのかを、実践をもって理解していくための教材だ。GREEN SPOONが提供しているのは単なる食品ではなく、ユーザーが自ら変わっていく過程なのだろう。