Vol.706

21 NOV 2025

いつもの自分をアップデート。本当に似合うメガネに出会える表参道|blinc vase

もともとは医療器具だが、今や欠かせないファッションアイテムとなったメガネ。見た目の印象に大きく影響するものだからこそ、選ぶ時間が楽しい反面、無難にまとめようか個性的なデザインにしようか悩んでしまう人もいるのではないだろうか。そんな私の悩みに寄り添いつつ「どう自分を演出するか」ではなく「似合う」ものを紹介してくれたのが、表参道にあるアイウエアショップ「blinc vase」だ。このお店では、今までの自分の延長線上にありつつ、そこから一歩垢抜けられるメガネを紹介してくれる。

アイウェア専門のセレクトショップ「blinc vase」とは?

表参道のblinc vase
blinc vaseは、1940年に創業したメガネ店「荒岡眼鏡」から生まれたアイウエアショップだ。現在は3代目が事業を引き継ぎ、2001年にオープンした「blinc」(外苑前)をはじめ、「blinc vase」(表参道)、「blinc web store」の3店舗の運営を手がけている。

各店舗では、取り揃えているブランドに違いがあるそうだ。比較的近い距離に構えられているため、回ってみても楽しいかもしれない。

blinc vaseでは国内と海外から仕入れたブランドを、時に入れ替えながら15〜20ほど店頭に並べている。その割合は国産ブランドと海外ブランドが半々ほど。誰もが知っているメガネの産地・鯖江などで製造されたメガネを扱うブランドのほか、アメリカやフランス、イギリスなどのメガネを取り揃えている。

各パーツを選ぶことができる
また、自社オリジナルのメガネの販売もしているそうだ。中には部品を選んでカスタマイズできるものもあり、自分好みのメガネを作ることができる。

ここ数年は太いセルフレームが流行っていたが、最近はメタルフレームに人気が再熱しているそう
さらにセレクトのこだわりについて、blinc vaseでマネージャーを務めている田代さんに話を聞いた。

blinc vaseだからこそ出会える海外ブランド

イギリスブランドのアイウェア
「日本のメガネの魅力を伝えるのと同時に、blinc vaseならではの魅力を作るために、日本ではあまり取り扱いがない海外のブランドをセレクトするように心がけています。

ここでしか出会えないブランドを揃えることに、とても強いこだわりを持っているためです。

オーナーが主に選定をしており、展示会で探したり、最近ではSNSで見つけたりすることも多くなりました。

とはいえ海外のものは、日本で身につけるにはデザイン性が強すぎるものも多いので、各ブランドのエッセンスがありつつ、日本でも使いやすいものをセレクトするよう心がけています」

左・C.W.Dixey&Son、右・SAVILE ROW
「例えば、長年取り扱っているものにC.W.Dixey&Son(シーダブリューディキシーアンドサン)やSAVILE ROW(サヴィル ロウ)があります。

C.W.Dixey&Sonは、現存しているブランドでは世界最古と言われている英国のアイウェアです。産業革命期に光学機器メーカーとして誕生し、ナポレオンや清朝皇帝にもメガネを献上してきた歴史を持ちます。作家イアン・フレミングや俳優ピーター・セラーズ、ウィンストン・チャーチルなど、名だたる文化人が愛したことでも知られているブランドです。

SAVILE ROWは1988年に始まった老舗で、元は「ALGHA WORKS(アルガワークス)」という工場でした。1930年代、当時イギリスでは保険制度で「メガネの無償支給」をしており、そのメガネの制作を請け負っていた工場がALGHA WORKSでした。

その後、ALGHA WORKSはSAVILE ROWというブランドになり、特徴は、現在は眼鏡に使用されることのないロールドゴールドを素材に採用している点ですね。

店内にずらりとアイウェアが並ぶ
「その他、日本のブランドなら、きっとみなさんも名前を聞いたことがあるEYEVAN7285(アイヴァン)を取り扱っています。EYEVANは、実は海外でも人気なんですよ。

YUICHI TOYAMA. (ユウイチトヤマ)は、シンプルでありながら独自の存在感を持つメガネを作るブランド。こちらも世界的に注目されています」と田代さん。

セレクトショップならではの強みは、フラットな視点

店頭に出ていないカラーも、スタッフに伝えれば見せてもらえる
「各ブランド直営のお店でアイウェアを探せば、よりブランドのこだわりや世界観に深く触れられると思います。一方で、僕たちのようなセレクトショップで購入する良さは、やはりさまざまなブランドのアイテムを比較できる点。さらに私たちスタッフもブランドの営業ではないため、フェアな視点でご提案ができるんです」

それなりに値は張るが、ディテールに違いを感じるそう
実際に私もblinc vaseで、さまざまなアイウェアブランドを試させてもらった内のひとりだ。自分の思い込みで似合うと思っていたデザインがイマイチだったり、逆に予想外のものが似合っていたりと、メガネのおもしろさに気づかせてもらった。

さらに私がblinc vaseを訪問して良かったと思った点は「自分にはこれが似合ってる」と、納得したものを購入できたところだ。

無難より「似合う」を。「OSCAR MAGNUSON」との出会い

OSCAR MAGNUSONのメガネ
私がblinc vaseで購入したのは、スウェーデンのストックホルムを拠点とするブランド「OSCAR MAGNUSON(オスカー マグナソン)」のものだ。このメガネ、海外にいても日本にいても多くの人にデザインを褒められる。

今では自分でもしっくりきているメガネだけれど、購入したときはちょっと心理的ハードルが高かった。なぜならこれまでは、無難なデザインのものばかりを選んできたからだ。

置いておくだけで絵になる
色こそ落ち着いているが、直線的なデザインと大きめのサイズはそれなりに存在感がある。けれども掛けてみると都会的な雰囲気の中に妙な色気のようなものがあり、不思議と今までになかった女性らしさを感じさせた。

迷ったけれど購入に踏み切れたのは、色々試してみた結果、人の目など気にせずどれが一番自分に似合っているかという視線で眺めたときに「絶対これ」と思えたこと。さらに接客してくれた田代さんが背中を押してくれたことが大きい。柔和な物腰で無理におすすめすることもないが、似合っていたら子どものような無垢さで「あ、これですね」と言ってくれる。過剰に褒めるわけではなく、その腑に落ちただけかのようなフラットな姿勢が、とても信用できるのである。

メガネ選びに正解はない

上のフレームが直線。けれど冷たい印象にはならない。
「今はインターネットで情報を集められるので、みなさん自分の顔にはこれくらいのサイズのメガネが良いとか、面長ならこういう形とか、事前に調べて来店してくださいます。

けれど、顔の形による制限はない、というのが僕の持論なんです。メガネはもっと自由に楽しめるアイテムですし、先入観に囚われていてはもったいないと思います。

実際に掛けてみると、イメージとは違った印象になることもしばしば
「似合うかどうかは、実際に掛けて確かめてみるまでわかりません。なので、もし来店できるならできるだけ来て欲しいですね。長年の経験で、お顔を見ればどういうメガネが似合うのかは大体わかります。そこから後は、ライフスタイルとの兼ね合い。仕事でも使いたい場合デザイン性が高すぎると使いずらいかもしれないなど、洋服のように場面に合わせた使い分けが難しいアイテムだからこそ、ヒアリングをして、状況に適したものを提案させていただきます」


メガネに個性があるだけで、コーデが一気に垢抜ける
私の場合は、丁度会社を辞めてフリーランスになり、海外にも頻繁に行くようになったタイミングでの買い物だった。編集・ライターなので、仕事仲間はフォトグラファーやデザイナーなど、いわゆる「クリエイター」と呼ばれるような職種の人たちだ。そのため真面目な印象を作る必要はない。ましてや海外だと、学校の先生や役所の人など、お堅い職業の方々までがびっくりするほど奇抜なデザインのメガネを楽しんでいる。

とはいえ日本と海外(特にフランス)を行き来する日々なので、2つの国、どちらの風土も尊重したい気持ちはある。だからこそ色は無難で形に個性が光るOSCAR MAGNUSONは、今の私にとってベストな買い物だったと思う。

お気に入りのメガネは日々の相棒に
今までブランドのオーナーやファッション誌の編集長など、ファッション関係の方にも多く取材をしてきた。そんなおしゃれの最前線をゆく彼らがみな口を揃えて言うのが「ファッションは似合うかどうか。似合うなら何を着たって良い」というスタンスだ。

奇抜だろうが人と違かろうが、着る人に似合うのであればなんだって良い。逆にスタンダードなアイテムを、自分のものとして気持ちよく着こなせる人もいるのである。ジャンルや世の中の正解ではなく「似合う」を軸に考えると、それだけで一気に選択肢が広がる。だから私はこの考え方がとても好きなのだ。

自分の似合うと向き合う第一歩を体験させてくれたblinc vase。みなさんも足を運んでみてはいかがだろうか。

blinc vase