暮らしやすさは折り紙つき。荻窪駅から徒歩5分の商店街に位置する「ラベイユ」
駅前のバス通りを小路へと一本入り、数々の飲食店やカフェ、商店、美容室、薬局など生活に密着した店舗が並ぶ「荻窪教会通り商店街」に、「ラベイユ 荻窪本店」はある。
定番のアカシアから、レモンやアーモンド、コーヒーまで
「果物の花由来のはちみつはフルーティさ、ハーブは清涼感、ナッツは香ばしさやほろ苦さといったように、はちみつの味も、蜜源となる植物の特徴を反映しています。また、同じ花でも、産地によって味わいはまったく変わってくるんですよ」
はちみつにも酵母が生きている。繊細な管理によって守られる豊かな風味
「扱っている蜂蜜はすべて、養蜂場の場所、養蜂家の顔と名前がわかります。取引を始める前には養蜂場を直接訪ねたうえで、自然環境や養蜂家の技術、工場の衛生管理などいくつもの項目を審査しています」
ラベイユの代表である白仁田社長は、はちみつ先進国の一つであるフランスを訪れた際、フランス蜂蜜協会会長を務めたこともあるガブリエル・ぺルノー氏から、「はちみつは酵母が生きているから、しっかりと温度管理をしてワインと同じように扱いなさい」という言葉を授かったという。
「ラベイユでは、ペルノー氏から教わった、はちみつの風味を損なわないための独自の品質管理基準で商品管理を行なうことで、本来の豊かな風味をお客さまにお届けしています」
パン、ヨーグルト、チーズ…。食材と合わせてマリアージュを楽しむ
食べ合わせのコツを聞いてみると、食材によってさまざまなパターンがあるので一概には言えないとしながらも、「パンがお好きな方なら、パンの色とはちみつの色を合わせると味わいのバランスが良いですよ」と教えてくれた。白いパンなら白っぽい薄い色のはちみつ、黒っぽいパンにはこっくりと黒いはちみつを合わせると良いということだ。
また、はちみつの産地と食材の産地を合わせるのもコツの一つだという。例えば、甘み・余韻・香りがいずれも力強く、お店でも人気のある定番商品「ギリシャ タイム」は、ギリシャヨーグルトと合わせるとベストマッチするという。
いろいろと試食をしてみて悩んだ末に、筆者は「スペイン アーモンド」と、「ギリシャ オーク」を購入することに。「スペイン アーモンド」は地中海に面するカタルーニャで採れたはちみつだそうで、一般的なはちみつの「なめらかでねっとり」という印象ともまた違った、ふんわりとクリーミーなテクスチャーと、香ばしい風味が気に入った。
「ギリシャ オーク」は、ナラの木の樹液を吸った昆虫の分泌物を、はちが巣に持ち帰ってつくる「甘露蜜」の一種だ。黒糖のようなコク深い甘みに加えて酸味も感じられる、食べたことのない複雑な味わいが気になって購入を決めた。甘露蜜は樹液由来のため、ミネラルや鉄分などもほかのはちみつより多く含まれているという。
黒っぽい色味のオークは、色味を合わせて黒っぽいパンや、コーヒーにもよく合うという。「また、贅沢な使い方かもしれませんが……」と前置きして、内緒話のように教えてくれたのは「納豆にも良く合う」ということだった。
山田さんの両親の出身地・北海道では、納豆に砂糖を入れて食べるのだという。そこで、納豆に合うはちみつをいろいろと試した結果、「ギリシャ オーク」が一番だったのだとか。黒糖のようなコク深さがあるので、これまた贅沢な使い方にはなるが、煮物などとの相性も良さそうだ。
まるで「天然のジャム」。自分だけの食べ合わせを見つける楽しさ
「ミネラル・ビタミンなどの栄養素が豊富に含まれていたり、腸内環境を整えてくれたりと、はちみつには健康面での魅力もたくさんあります。ですが、やはり私が一番にお伝えしたいのは、蜜源によってまったく異なる味が楽しめる面白さです」
いまでこそこう語る山田さんだが、かつてはむしろはちみつが苦手で、ラベイユで勤めるようになってから「こんなにいろんな味があるんだ!」とおどろいたのだとか。
「だからお客さまにもたくさんお試しいただいて、ぜひお気に入りのはちみつ、食べ方を見つけてほしいです」
筆者もたくさんのはちみつを試食してみると、あまりにも多様な味、香り、食感に出会えるので、それらをすべてひとくくりにして「はちみつ」と呼んでしまうのは気が引けるくらいだと感じた。一つひとつが「天然のジャム」とでもいうべきか。
パンやヨーグルト、紅茶やコーヒーなどの定番の食材とのマリアージュはもちろん、「意外にこんなものにも合った!」と、自分なりの味わい方を見つけるべくさまざまな食べ合わせを試していると、はちみつを通じてほかの食材の知らなかった一面にまで出会えそうだ。おいしいもの好きにとってはたまらない「はちみつ沼」の入口に足を踏み入れてしまったかもしれない。