身支度を整える場である洗面台が美しいと、それだけで生活に芯が一本通ったように感じられる。換気をすること、清潔さを保つこと、鏡を美しく磨いておくこと。日々の細やかな掃除の大切さは理解しつつ、さらに視覚的にも胸が踊るものを置いておくと、私のモチベーションは確実にアップする。ケア用品でありながら思わず目を惹かれるパッケージをしているのは、フランス生まれのBOTOT(ボト)。日本でも大人気を博した映画「アメリ」などで、美術としても採用されたステキな見た目のマウスウォッシュや歯磨き粉を展開している。今回は、このBOTOTをご紹介する。
薬局で買える手軽さと、おしゃれなパッケージが魅力
上質さを感じさせるガラスの瓶と、控えめながら印象的なパッケージが魅力的なBOTOTのオーラルケア。古い広告で使われていた手書きのフォントのような少しレトロな雰囲気が、フランスらしさを感じさせるデザインだ。
フランスでは薬局で簡単に手に入り、種類も豊富。箱に入った歯磨き粉は、フランスに旅行に来た際のお土産としてもおすすめだ。
また、赤や黄色、緑といった童心をくすぐる色鮮やかなマウスウォッシュたちは、洗面台に置いておくだけで気持ちまで華やかになる見た目。フレーバーで選ぶのはもちろんだが、その時の気分や洗面台のインテリアに合わせて、ビジュアルでマウスウォッシュを選びたいという気持ちにさせられる。
SNSの普及でおしゃれなパッケージの製品が数多く生まれている昨今だが、残念ながら、ときどき使い心地が見た目の印象に負けしてしまっている物に出会うことも少なくない。けれどもBOTOTは、なんと1755年から使われつづけている実力派。創業以来、フランスのオーラルケアブランドで最も売れている製品なのだ。
マリー・アントワネットも使った。伝統あるオーラルケア
歴史は今から約270年前まで遡る。私はまずこんなにも古くからオーラルケア用品があったことに驚いてしまうのだが、それもそのはず、なんとBOTOTは "世界最古の歯磨き粉" なのだそうだ。けれども開発された当初は、当然一般庶民が手に入れられるものではない。フランス王室の主治医だったエドム・フランソワ・ジュリアン・ボトが、ルイ15世のために「l'Eau de Botot(ボトの水)」を作ったのがはじまりだ。
その後フランス革命の直前に、ルイ16世もこれを気に入り、「ボトの水」に王室のお墨付きを与えた。そして数ヶ月後にかの有名なヴァレンヌ逃亡事件が起こり、ルイ16世とマリー・アントワネットは囚われの身となってしまう。しかしそんな境遇にも関わらず、マリー・アントワネットは監視の者にこの水を持ってくるように頼んだというのだから、「ボトの水」が、いかに彼女の生活にとってかけがえのない物だったのか窺い知れるのではないだろうか。
他にもフランスの小説家・バルザックの小説に登場したり、2001年に公開された映画「アメリ」では、主人公アメリのバスルームにも飾られていたりと、歴史の深さからカルチャーとも密接な関係があり、まさにフランスのオーラルケアの歴史を作ってきたブランドなのだ。
アニスの甘い香り。マウスケアは「ミント」という思い込みが覆る
マウスウォッシュのフレーバーは「シナモン・いちじく・ミント」「甘草・レモン・アニス」「クローブ・ミント・シナモン」「松・ミント・ユーカリ」が揃えられている。爽快感のあるミント味が主流の日本のオーラルケアとは違ったフレーバーのため、使う時間がなんだか楽しくなりそうである。
今回私が試してみたのは、晴れ晴れとして気分をもたらしてくれる黄色をした甘草・レモン・アニス味。
アニスは日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、フランスではキャンディや焼き菓子などに使われているたいへん人気のあるスパイスだ。独特の甘い香りがあるが、しつこい甘さではなく、後味にはすっきりとした清涼感がある。薬草のような風味もあるため好みが分かれるが、私は癖のある食べ物が好きなため、たまにアニスが恋しくなる。余談だけれど、ホットミルクにアニス酒を少し足らして飲むと、牛乳のまろやかな味わいに優雅な爽やかさが加わり、リラックスできるのでおすすめだ。
さて、今ご説明したように、甘い香りとスパイスならではキレの良い風味を持っているアニス。マウスウォッシュを最初に口に含んだ時はアニスの甘い香りがふわりと香るが、薄荷のような爽快感があり、決して嫌な甘さが口に残らない。のど飴を食べたときのような、薬草の香りとスッキリさ、そして甘さと言えば、味をご想像いただけるだろうか。ミントのような鼻を抜ける強い清涼感はなく、どこかまろやか。マウスウォッシュに欲しい爽やかさがありつつも、心をリラックスさせてくれる風味は、いままでオーラルケアの清涼感といえば「ミント」と思っていた私の常識を、うれしい驚きで覆した。
歯磨き粉もマウスウォッシュと同じ味わいが揃っており、こちらは「シナモン・いちじく・ミント」を試してみた。
いちじくはジャムやケーキのデコーションではよく見るが、歯磨き粉に使われているのを見たのはこれが初めて。オーラルケアのフレーバーとしては王道ではないフルーツだが、「こんなの欲しかった」と思ってしまうような、絶妙なセレクトにはセンスが感じられる。こちらはミントが入っているため、とても清々しい。どうしてもミントの香りが強いため、いちじくはささやかに香る程度だ。けれどもときどき、いちじくならではのムスキーな香りを感じられる。
お気に入りのオーラルケアがあれば、旅行の気分もあがる
知らない土地に赴く旅行。常々ハンドクリーム、オイル、目薬などのケア用品はお気に入りのものを持って行きたいと思っている。旅行中は楽しいけれど、初めての場所を前にしてどうしても緊張感を感じてしまうのだ。そのためホテルでほっと一息つきながら行う身支度は、精神を整え、心の拠り所となってくれるような気がする。幽閉されたときに「ボトの水」を欲しがったマリー・アントワネットの気持ちも、もしかしたら私に近かったのかもしれない。
BOTOTのマウスウォッシュは250mlと150mlが売られており、150mlの方は手のひらにおさまるサイズだ。そのため持ち運びがしやすく、旅行にも最適。
使い心地が素晴らしいのはもちろんのこと、フォトジェニックな見た目をしたBOTOTなら、非日常的な旅行中の気分にも、寄り添ってくれるのではないだろうか。
歯磨きの時間が、リラクゼーションタイムに
オーラルケアの時間を、掃除のように義務だと思うのか、それとも自分を労る特別なひと時だと捉えるのかで、日々の幸福感は大きく変わる。
BOTOTは美意識を感じさせる見た目と、ハーブやフルーツを使った優雅な香りで、歯磨きを単なるルーティンではなく、リラクゼーションタイムに変えてくれるのだ。みなさんも、いつもの生活にBOTOTを取り入れて、歯磨きの時間をより上質にしてみてはいかがだろうか。
BOTOT
CURATION BY
東京都出身。フリーの編集・ライター。フランスと日本を行ったり来たりの生活をしている。