Vol.613

MONO

31 DEC 2024

きらめく美しさと繊細さに触れて。廣田硝子の世界

光が当たるときらきらと輝き、見つめれば吸い込まれそうな透明感を放つガラス製品は、その美しさと同様に壊れやすさが特徴だ。だが大切なガラスの食器を戸棚の中にしまい眺めるだけでなく、日々の暮らしに取り入れてこそ、もっと愛せるようになるはず。繊細なガラス製品は、どうすれば美しいまま長く保ち続けられるのだろうか。時代を経てなお魅力を放ち続ける廣田硝子のプロダクトが、その答えを教えてくれるに違いない。

手に触れることで分かる、ガラスのきらめきと儚さ

ガラス素材のものに心惹かれる人は数多くいるに違いない。かくいう私もその一人で、幼い頃からガラスのボトルを拾ってきては母を困らせたり、割れたガラスの破片を集めてはうっとりと眺めたりと、その繊細かつ潔い透明感に心奪われてきたものだ。

ガラス製品はその美しさ、地域や作り手によって異なるデザインで時代や国を超え、人々を魅了し続けている
ガラスの魅力はその透明さ、光を受け止め反射し幾つもの異なる表情を見せる面、固く冷たい手触りを持ちながらも、ぶつけるとすぐに壊れてしまうという繊細さも兼ね備えているところだろう。

そう、ガラスの特徴であり魅了してやまない理由のひとつであり、そして最も気を付けねばならないのがその繊細さだ。特にガラス素材の食器類は多くの人が割ってしまって切ない思いを抱いたことがあるのではないだろうか。

大切な品ほど割ってしまった時の後悔は大きく、ガラスの食器は購入するのに躊躇いを感じがちだ
だが壊れてしまうからと言って、せっかく購入したお気に入りの品々を飾って眺めるだけではもったいない。暮らしに取り入れ、日々使いこなすからこそより一層愛着が湧いていくもの。

ガラス製品の美しさと、生活の一部になる素晴らしさを教えてくれるのが、廣田硝子のプロダクトだ。儚さとエレガンス、そしてどこかに漂うノスタルジックなデザインは、いつの時代も色あせることなく、日常を豊かに彩ってくれるだろう。

時代とともにテーブルを彩る廣田硝子

江戸時代にまで遡る日本におけるガラス食器製造。明治時代には東京品川に国が官営の『品川硝子製作所』を創立したこともあって、東京の下町では多くのガラスメーカーが構えられた。今回ご紹介する廣田硝子もそのうちのひとつであり、創業は1899年、明治32年という長い歴史を持つ。

現在はスカイツリーが建つ東京都墨田区で、廣田硝子は設立された
東京におけるガラス製造では、西洋からもたらされたガラス素材に日本に伝わる美意識が結びつき昇華され、オリジナリティあふれるデザインが生み出された。戦後に多くのガラスメーカーが機械による大量生産を行ったのに対し、廣田硝子はあくまで手づくりによる生産にこだわり、創業時から伝わるデザイン資料をもとに、今もなお職人による手仕事で生み出された味わい深く繊細なデザインを生み出し続けている。

いまだからこそ新鮮。昭和モダンの美しさ

私が初めて廣田硝子を知ったのは、懐かしさが逆に新鮮に感じられるBYRONシリーズのガラス食器を見た時だった。1960年代の昭和の喫茶店で多く使われていたという「昭和モダン珈琲」のコーヒーグラスやサンデーグラスは、ノスタルジックな雰囲気を存分に味わうことのできる逸品だ。

BYRONシリーズは金型を再び興し、カラーも当時の色合いに出来るだけ近づけ、吹きガラスでの製法にて復刻されている

表面には縦にドレープ状のラインが施されている

光が当たると趣のある影を描き、使う時間によって異なる表情を作り出す
今回購入した『BYRONサンデー アンバー モール』は落ち着いたアンバーカラーが美しく、家でのブレイクタイムのひと時をぐっと盛り上げてくれるに違いない。

喫茶店文化が花開いた昭和をイメージしながら、様々な使い方を楽しんでみよう
そして廣田硝子で復刻されたもうひとつが、家具やキッチンツールといった生活用品から公共建造物まで手がけ、世界にその名が知れ渡っているインダストリアルデザイナー、柳宗理のワイングラスだ。

記憶に残るモダンなデザイン。柳宗理は戦後の日本で、日常的に使うもののデザイン性を上げようと常に試み続けてきた
このワイングラスは1979年に柳宗理がデザインしたもので、ソーダガラスを素材とし、職人によって手吹き成形でひとつずつ作られている。底はぼってりと厚みのあるフォルムで持ちやすく、トップは薄く繊細な作り。今回はSサイズを購入したが、ワインはもちろんとっておきの日本酒をじっくり味わうのにも向いている。

印象的なワイングラスがかけがえのない時間をひと際輝かせてくれる

食卓を華やかに。小さなガラスツールを取り入れて

廣田硝子ではガラスの食器類を数多く取り揃えているが、食卓を彩る小さな名脇役も多く展開している。ここでご紹介するピックやマドラー等はつい他のもので代用しがちだが、ひとつあるだけでテーブルを華やかに演出してくれるだろう。

下からミニスプーン、ピック曲げ、ピック段付。ガラスらしい涼やかさで、使う度に心が弾む

どれも爪楊枝よりも少し長めの華奢なサイズ。優しく丁寧に取り扱いたい
たとえばミニスプーンはすりおろしたニンニクやマスタードなど、薬味をすくう時にあると便利なアイテム。一度このミニスプーンを使用してみると、その使いやすさにきっと驚くはずだ。

ガラス素材だから洗いやすく、匂いや味が移らないところも嬉しい
またオリーブやフルーツなど、小さめの食材を刺す時に便利なピック。ガラス独自の清涼感漂う雰囲気で、器とともにテーブルコーディネートに一役買ってくれること間違いなしのプロダクトだ。

金属製のピックのように金気を感じることもなく、食材の味を惹き立てる

くるりとしたフォルムが印象的なピック曲げ。爽やかな雰囲気で、ティータイムに活用したい
ひとつあると重宝するのがこちらのハニーマドラー。ねじりの部分を下にすれば蜂蜜やシロップをすくって垂らす時に、ねじりの部分を上にすればドリンクをステアする際のマドラーにと、二通りの使い方のあるアイテムだ。

木製のハニーディッパーは洗いにくいと感じている方にぜひ使って欲しいガラス製のハニーマドラー

マドラーとして使えばドリンクの味を損なわず、より優雅な気分を味わえる
こういった小物はあったら良いなと思いつつ、使う頻度がそこまで高くないと思い、つい後回しにして箸やスプーンで代用してしまうこととなる。だがこれらを用意しておくとテーブルシーンを一層華やかにしてくれるはず。繊細なガラスの美しさを堪能できることだろう。

ゲストが来た際に、あるいは一人で過ごすひと時に。食卓の風景がより豊かになる
そしてサスティナブルが推奨されている今、お薦めなのがガラス製のストローだ。実は昭和の時代にもガラス製のストローは数多く生産されており、廣田硝子では当時と同じように日本のガラス職人がひとつずつ生産している。口に当てると涼し気な感触で、グラスとの相性も抜群だ。

口元はラッパ状に加工されており、唇にフィットし飲みやすいフォルムになっている
洗った時に中身が見えるので常に清潔に保てる利点もあり、匂いや油分、色合いが浸み込まないのもガラス素材だからこそ。ガラスの透明感が作り出す繊細な風情を季節を問わず楽しんでみたい。

飲み物の味や香りを損ねることなく、繰り返し何度も使えるガラスストロー

ガラス素材の繊細さから学ぶこと

「形あるものはいつか壊れる」とは言うものの、お気に入りの品が壊れてしまうのを目にするのはひどく切ない。ガラス素材のものを購入する前に一瞬躊躇してしまうのは、いつか失ってしまうことを想像するからかもしれない。だが大切なものを失くしたことがあるからこそ、そうならないよう回避する方法を身に着けられる。

大切なものを取り扱うから、自然と動作を丁寧に行うように
繊細なガラスの食器を扱う時は優しく触れて、洗う時や拭く時には細心の注意を払う。手に取る時にも食卓に置く時も、落ち着いた動作を心掛ける。愛情を込めて接していれば、ガラス製品はいつまでも変わらずにその輝きを放ち続けてくれるはずだ。

繊細なガラス製品は日常使いにしてこそ愛着が湧いていく
職人による丁寧な手仕事によって生み出し続けている廣田硝子のプロダクトを繰り返し日々の暮らしで使うことにより、その素晴らしさを実感出来ると同時に、大切なものをどのように慈しむかの意味を知るきっかけになるだろう。

廣田硝子|Hirota Glass

BYRON サンデー アンバー モール ¥3,850(税込)
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柳宗理 ワイングラスS ¥4,180(税込)
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ミニスプーン ¥385(税込)
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ピック曲げ ¥385(税込)
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ピック段付 ¥385(税込)
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ハニーマドラー ¥1,100(税込)
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ガラスストロー 20㎝ ¥990(税込)
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