Vol.27

MONO

22 APR 2019

北欧の砂時計から生まれる3分間のゆとり。HAY「TIME」

たとえ小さなものでも、いいものは私たちの感性を育ててくれる。日常で使う小さくてミニマルな要素を持ったアイテムは、いつの時代も変わらず魅力的だ。今回フォーカスを当てるのはHAY「TIME」。仕事や家事に追われ、忙しい毎日を送る人にとって、ごく僅かな時間にすぎない3分という時間。たった3分でも砂時計から落ちる砂を眺めていることで、ミニマルな“今”に集中することができる。そんなミニマルなアイテムが持つ、奥深い世界を覗いてみよう。

HAY「TIME」¥2,000(+tax)

忙しい時こそ、“今”の3分に向き合おう

毎日やる事に追われ忙しい日々を過ごしていると、いつの間にか心の余裕が無くなってしまうものだ。24時間ある1日のうちの1時間も、一瞬のように過ぎ去ってしまう。時間に追われ続ける生活は、決して“質のいい暮らし”とは言えない。
自分らしい幸せな暮らしを求めるならば、物だけでなく時間の使い方にも無駄がないか、見直すべきかもしれない。
そんな時に出会ったのが、デンマークのインテリアプロダクトブランドHAY(ヘイ)の「TIME」という名の砂時計だ。
一般的に時間は1秒、1分、1時間、1日、1週間、1ヶ月、1年…という単位で区切られている。1日は24時間、どの人間にも平等に与えられているものだが、その24時間の中の“今”ある1分、1秒に集中していなければ、時間は何もせずともあっという間に過ぎ去ってしまう。
有機的で柔らかな形状のHAYの「TIME」は、クラシックでありながら、木枠などの余計な要素を省いたシンプルさがあり、どこかモダンな印象を与えてくれる砂時計だ。透明なガラスに黒い砂というデザインもミニマルで、インテリアアイテムとしても活躍してくれる。
ガラスに光が当たってできる影や、光を反射してキラキラと輝く砂も美しい。
手にとってひっくり返し、3分間サラサラと落ちる砂を眺める。砂の落ちる速度は意外と早く、落ちる砂が下方に作る小さな丘は徐々に大きくなる。一方で上方の砂は穴に吸い込まれ、中央にくぼみを作る。砂が落ちる事で、周囲の砂が崩れ落ちる動きもおもしろい。砂時計を見つめて3分。気づくと心はすっと落ち着いていた。

デンマーク発のプロダクトブランド「HAY」

HAYは2002年に、Rolf Hay(ロルフ・ヘイ)とMatte Hay(メッテ・ヘイ)夫妻によって設立されたブランドだ。1950年代、60年代のデンマーク家具デザインを大切にしながらも、現代の新しいデザインを取り入れた商品を開発している。
「若いデザイナーにも家具をつくる機会を与えたい」というRolfの想いから、北欧のデザイナーにこだわらず、インターナショナルな視点で各国の若手デザイナーとコラボレーションしている。
HAYが手がける魅力的なアイテムは、家具やインテリアアクセサリーから食器、ステーショナリーなど、HAYのアイテムだけでリビングやダイニング、オフィスなどの部屋全体をコーディネートできるほど幅広く展開。機能性とデザイン性を兼ね備えた良い商品をそろえながら、日常にも取り入れやすいようにと、高すぎることのない値段に設定されているのも嬉しい。
日本ではMoMA Design StoreやCIBONEなどの感度の高いセレクトショップが取り扱うほか、表参道GYRE(ジャイル)の地下1階にも2019年夏までの期間限定でHAY TOKYOがオープンしている。

3分あれば何ができるのか

ここでまた時間の話に戻ろう。3分というのは皆に平等に与えられているものだが、その時間の感じ方は人それぞれであり、1人の人間でもどんなことをしているかという状況によって感じ方は変わる。集中して作業している時や、仲のいい同僚と雑談している時の3分は一瞬のように感じるし、つまらない会議の3分は永遠のように長く感じることもあるだろう。
一方で、3分あれば紅茶やハーブティーを淹れる、英単語の学習をする、瞑想をする、短編小説を読むなど …能動的に、自分の暮らしを豊かにするためにできる事がある。そういった時間に、砂時計があるとどうだろうか。
ミニマルミュージックの大家であるSteve Reich(スティーブ・ライヒ)も1968年の著書『Writing about Music』のMusic as a Gradual Processで、作曲のプロセスの一部として砂時計を観察する時間を取り入れることで、些細な音の変化の発見につながったという。
流れる時間の中で感じる“今”というものは、経験した瞬間に過去になる。そんな現れては消えていく儚い“今”とは、自分の意識が規定する事で初めて生まれるものであり、他人が決めるものではない。今から3分間、何をするか。3分という時間の中でどんな変化が起こりうるのか。砂時計はミニマルな視点で今に集中させてくれるのだ。
このミニマルで美しいアイテムを、生活に取り入れてみてはいかがだろうか。

今回紹介したアイテム

HAY「TIME」
S/3min-clear(black)
Size / 約φ35×H90mm
¥ 2,000(+tax)