日々の小さなストレスを解消してくれる、便利なキッチンツールを見かけることがある。しかし機能的ではあるものの、デザイン的に納得がいかないものがあるのも事実。キッチンや食卓に置くのに食指が動かない場合もあるだろう。そんな中でNorpro(ノープロ)のバターキーパーは、バターを常温保存で約1か月間、傷むことなく新鮮な状態をキープしてくれるプロダクト。なめらかなバターはパンにスムーズに塗れてストレスを軽減してくれるだけでなく、シンプルなデザインがキッチンやテーブルで映え、食の意識を高めてくれるアイテムだ。
日常の中の小さなストレスを減らして
暮らしの中で、小さな事だがその都度不満を感じることがある。そのひとつがパンに塗る際のバターの固さ。朝食にトーストを、とバターを冷蔵庫から取り出すとそれはカチカチの状態で、一気に気持ちが萎えてしまう…そんなことはないだろうか。バターナイフが使えないほど硬いバターは、パンに塗ろうとしてもスムーズに行えたことがないからだ。
ある個所はバターたっぷりなのに端は塗られていなかったり、無理に塗ろうとしてパンがつぶれてしまったり。些細な事だと自分に言い聞かせてはみるものの、パンを食べる度にどうにかならないものかと嘆息する。食事の前にバターを常温に戻せば良いとも思うが毎回それをするのは億劫なのだ。
この「バターが上手くパンに塗れないもどかしさ」は世界中で多くの人が感じていたらしく、アメリカでバターキーパーなるものが流行っていると聞き、早速取り寄せてみることにした。
バターを室温で、水と一緒に保存するバターキーパー
パンに塗るだけでなく、調理にも欠かせないバターの保管は冷蔵庫、という常識を覆し、室温でバターを保存するバターキーパー。バターはなめらかでスムーズに広がり、新鮮さを保ってくれるプロダクトだが、何故室温保存でそれが可能なのだろうか。
バターキーパーはバターを入れた鈴状の容器を、水を注いだベースの器に逆さに入れて保管するものだ。この注いだ水がバターが空気に触れるのを防ぎ、気密シールの役目を果たして鮮度を保つ。室温で保存するため柔らかな状態を維持し、バターには油分があるため水を弾いて吸収することはない。
このバターキーパーは他にフレンチバタークロック、フレンチバターポットなどの名称があり、それからも想像ができるようバターに深いこだわりを持つフランスが発祥だ。
冷蔵庫が存在しなかった中世の時代、密閉できる容器にバターを入れて冷たい水の中で保存していたそうで、容器そのものにバターと水を入れて保存する方法は19世紀に広まったとされている。
発祥の地はフランスの陶器の街として知られるプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏にあるヴァロリス、あるいはバターの産地で有名なブルターニュ、ノルマンディーという諸説がある。
アメリカでは1970年代後半に陶芸家たちが製造し一時人気を博した事もあったが、バターの保存は冷蔵庫、というのが常識でありバターキーパーが普及することはなかったと言う。
だが1990年代後半から2000年代にかけて、アメリカのNorpro社とバターベル社が製造を始めると、バターキーパーはゆっくりと時間をかけてその評判が広がっていく事になる。
きっと多くの人が、硬いバターをパンに塗るのはストレスだと感じていたに違いない。バターキーパーの人気は製造されたアメリカだけでなく、海を超えてヨーロッパで、そして世界で高まっていくようになったのだ。
Norproバターキーパーの使い方
今回バターキーパーを探した際に選んだものが、Norpro社のバターキーパーだ。シンプルなデザインで、どんなテイストのテーブルコーディネートにも合わせやすいのが嬉しい。北アメリカ北西部で1973年に創立されたNorpro社は、設立以来常に優れたキッチンツールを展開しているブランドだ。
バターキーパーの構造はとてもシンプルで、バター、そして水を入れる二つの容器に分かれている。最初にバターを常温にし、柔らかくなったものを鈴状になった容器に隙間なく入れる。入れる前に容器は水分の無い、しっかり乾いた状態にしておこう。
冷たい飲料水を1.25㎝ほど注いだベースとなる容器に、バターを入れた容器を逆さにして入れる。水は2~3日に一度新鮮なものに替え、直射日光の当たらない場所に保管しよう。
バターは約30日間新鮮な状態をキープできるが、室温が27度以上になる場合の使用は避けること。無塩バターを保存する際は、注ぐ水の中に塩をひとつまみ入れておこう。
なめらかなバターを愉しみたい
室温で保存したバターは驚くほどなめらかだ。まずはトーストしたパンに塗り、均等に広がるその効果を実感してみよう。そしてサンドウィッチ。これまで硬いバターで塗りづらさを感じていた方も、このバターキーパーを使用すればストレスなくサンドウィッチを作る事ができるのに気付くはずだ。
お菓子作りをする方は、バターは常温にしたものを使用するのが決まりなのをご存知だろう。しかしふと思い立ってケーキやクッキーなどを作る場合、バターがほど良い状態になるまで待っていられない事もある。だがバターキーパーがあれば、すぐに調理することが可能なのが嬉しい。
パンだけでなく、バターを料理の仕上げに少し欲しいレシピもある。例えばコーンとご飯を一緒に炊いたコーンご飯は、とうもろこしの甘味を存分に味わえる一品。茶碗によそって仕上げにバターをそっと載せれば、より格別な味が楽しめるだろう。
普通のバターでなくちょっとひねりの効いたものを、という際にはハーブやニンニクをみじん切りにしたもの、オリーブを細かく切ったものを柔らかな状態のバターに混ぜてみよう。ゲストが来た際にもすぐに出せる、アレンジバターの完成だ。
食の探求心を刺激する
実を言えばバターという普遍的な食材に対し、これまで深く考えたことはなく、選ぶのにもこだわりを持ったことがない。調理に使う際もパンに塗る時も主役はあくまで他の食材で、バターは脇の存在だった。
だがNorproのバターキーパーを使用し始めてから、バターそのものの味を楽しみたいと考えるようになった。ちょっと奮発して上質のバターを買ってみる。その味を堪能したら、次は少し良いパンを購入してみようと思い立つ。
Norproのバターキーパーは水を利用した常温保存という新たな方法で、日々の小さなストレスを解消してくれる。だがそれだけでなく、バターという当たり前の存在、それに関わる食材の探求心を刺激してくれるプロダクトであるのを実感できるだろう。
Norpro
CURATION BY
1992年渡英、2011年よりスコットランドで田舎暮らし中。小さな「好き」に囲まれた生活を求めていたら、夏が短く冬が長い、寒い国にたどり着きました。