「香りから風景を思い浮かべる」、そんな体験をしたことはあるだろうか? 五感のなかで最も原始的な感覚といわれる嗅覚。「香り」は感情あるいは記憶に働きかけてくれる刺激であり、どこにいても、あなたを“そこ”に連れて行くことができる。JUNIPER RIDGE(ジュニパーリッジ)のエッセンシャルオイルをはじめて香った時、微かに、どこか広大な自然の風景をイメージした。そして、嗅覚を通し全身に染み渡った香りは、身体が本能的に求めているもののようだった。
JUNIPER RIDGEは、そんな香りの体験をライフスタイルに取り入れることができるプロダクトだ。創業者であるHall Newbegin(ホール・ニュービギン)が愛したカリフォルニアの豊かな自然の恩恵、香りの世界を堪能しよう。
愛する自然をライフスタイルに取り入れる
まずはイメージしてほしい。爽やかな空気のなか、青々とした若葉が生い茂る初夏の森。あるいは、乾燥した空気のなか、散った落ち葉の上をカサカサと音を立てながら歩く冬の山道でもいい。あなたは嗅覚から、多種多様な植生の香りを感じることができる。その刺激は全身に染み込み、時にあなたを癒やし、記憶の一部となっていく。
JUNIPER RIDGEがユーザーに届けるのは、まさにそんな香りの体験が詰まったプロダクトだ。自然を愛してやむことのなかったHall Newbeginが、風景をそのまま香りにするというアイデアを実現させたのは1998年のこと。彼が生み出すプロダクトは、「その場所のようなもの」ではなく「そのもの」であり、香りを通じて私たちをその場へ連れて行ってくれるのだ。
“そこにある香り”を閉じ込めた、唯一無二の存在
JUNIPER RIDGEが扱う素材は、彼らの拠点となるカリフォルニア州周辺の山や森、砂漠で自生する植物だ。将来も持続的に自生できるように乱獲しないサスティナブルな方法で採取するのは、樹皮や葉、花、樹液、キノコ、コケなど。しかもこれらは、全てワイルドクラフト(野生の植物を採取すること)したものだ。
さらにそれらを古代から伝わる水蒸気蒸留の技術で蒸留することで、不純物を一切加えないエッセンシャルオイルが完成する。
また、自然が相手であればもちろん“いつも同じもの”ができることはない。だからこそJUNIPER RIDGEがつくるプロダクトは、同じ土地で採取された同じ素材でも、年や季節によって微妙な変化がある。カリフォルニアの自然、そして季節までをも凝縮した“本物の”香りは唯一無二の存在だ。
もともとハイカーでありバックパッカーのHall Newbeginは、自然保護にも力を入れていた。創業当初ビジネスとして成功させるために試行錯誤を重ねるなかでも、利益の10% を自然保護団体へ寄付した。彼がはじめにつくりあげた香りのひとつは「Big Sur」の自然を切り取ったものだった。
現在「Big Sur」はJUNIPER RIDGEの「FIELD LAB」ラインで製造販売されている(少量限定商品のため、生産後は売り切れ次第終了)。このFIELD LABは“バンに道具を詰め込んで、ハイキングをしながら、その季節その土地の植物から現地で香りを作り出す、自然への愛を最も純粋な形で表現したプロジェクト”であり、まさにJUNIPER RIDGEの原点。Hall Newbeginは生前、このプロジェクトに一番情熱を注いだのだという。
はじめは彼自身がファーマーズマーケットで手売りしていたJUNIPER RIDGEだが、現在では10名程のスタッフが在籍。素材の収穫方法や製造方法から決して大量生産はしないが、彼の思いがこもったプロダクトは現地のオーガニックのスーパーマーケットやオンラインショップを通しファンも多い。
ひとつひとつのプロダクトが持つストーリー
JUNIPER RIDGEのプロダクトはエッセンシャルオイル、ルームスプレー、ボディオイル、ボディウォッシュ、ソリッドパフューム、コロンと多様だ。これら全ての香りのベースとなるのがエッセンシャルオイルである。
例えば、「COASTAL PINE」は、カリフォルニアの太平洋岸に広がる原始の森でワイルドクラフトされたマツ。「DESERT CEDAR」は、カリフォルニア州南東部に広がるイースタンシエラの高地砂漠に自生するシーダー。プロダクトは必ず、それぞれの土地と素材が紐づいている。あなた自身がお気に入りの香りを見つけることで、いつでもその土地を感じることができるだろう。
また、香りはもちろん、ひとつひとつの商品が持つストーリーにも注目したい。
例えば、毎年クリスマスシーズンに合わせて登場する「CHRISTMAS FIR」シリーズ。通常廃棄されてしまう数種類のモミをブレンドし、新たな命を吹きこんだプロダクトだ。こういったプロセスは「アップサイクリング(創造的再利用)」と呼ばれ、廃棄物や不要な製品に新しいアイデアを加え、別の価値を与えるリサイクルやリユースとも違う手段として知られている。
実はこの原料となるのが、アメリカの文化である生木をつかったクリスマスツリーの売れ残りだ。こういったストーリーからも自然を敬愛するHall Newbeginの思想が息づいていることがわかるだろう。
OUT THEREが日本で伝えていきたいこと
今回お話を聞かせてくれたのは彼らの公認の元、日本で輸入販売をするオンラインショップ「OUT THERE」運営の岡本明さんだ。2015年、現地でこのプロダクトに出会ってから自身もたちまちファンになった。
オンラインショップの名前「OUT THERE」はHall Newbeginがよく使っていた言葉だそうだ。岡本さんが日本で販売するにあたり気をつけていることは、彼らの言葉やコンセプトをぶらさずに伝えること。また「まずは実際に香りを試してほしい」と岡本さんはいう。
現在、日本で実際に香りを試して購入できる場所は限られているが、岡本さんのイベント出展や「 旅とアウトドアのコンセプトショップ Purveyors(群馬県桐生市)」、「高尾ビールタップルーム LANTAN(東京都八王子市)」などで手に取ることができる。
さぁ、香りの旅に出よう
毎朝のルーティンで、私はJUNIPER RIDGEのインセンスを焚いてみることにした。香りが漂うリビングは日常から解放され、どこまでも続くカリフォルニアの大地へと変わる。これがHall Newbeginがつくりあげた、「本物の自然」なのだろう。
あなたがJUNIPER RIDGEの香りを試せば、ただシンプルに、“そこにあるもの”を受け取れるはずだろう。そして、五感を研ぎ澄ませ身体が求めるものに従い、反応を思いきり楽しもう。海外への旅行がまだまだ難しい昨今だが、きっと香りを通じてカリフォルニアの地へ訪れることができるはずだ。
OUT THERE
CURATION BY
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。