食事に伴ってどうしても排出されてしまう、さまざまな廃棄物。十分に処理されないまま海に流れ出してしまったり、焼却によって有害物質を発生させてしまったりと、環境悪化を引き起こす原因として、広く知られている。その中でも、包装容器や保存袋をはじめとするプラスチック製品のゴミは、食材を買うときや料理を保存するときに、避けて通ることが難しい。
「なるべくゴミを減らそう」と心がけていても、スーパーで手にする食材は小分け包装がされているし、保存に特化したプラスチック製品には便利なものが目白押しである。食生活においてプラスチックゴミを減らすのは、口で言うほど簡単ではないのかもしれない。
しかし、ゴミを排出しているという気がかりから脱することは、より充実した食生活に近づく一歩ではないだろうか。この記事で紹介するスタッシャーは、食材を買うところから、調理、保存という過程においてゴミを減らすための有用なソリューションだ。
日頃から料理をする習慣のある筆者が、生活に取り入れてみた感想を伝えたいと思う。
洗って再利用できるシリコン容器
スタッシャーとは、アメリカ発のキッチンツールブランドが展開する、ピュアシリコンを使った密閉アイテム。ピュアシリコンとは、食品用品質と認められている純度の高い材質で、人体に悪影響を及ぼさない。
いわば、既存のプラスチック製保存袋に、シリコンならではの機能が付随した製品である。
高い密閉性をかなえるピンチロックシステムには、アメリカで特許を取得している高度な技術が用いられている。日本でも現在、特許を出願中とのことだ。
アメリカのお母さんが考案した、地球に優しいランチパック
プラスチックフリーという壮大なコンセプトは、アメリカに住む女性、創業者であるキャット・ノーリが抱えていた問題意識を起源に生み出されたという。
ひとつは健康に対する問題意識だ。キャット・ノーリは、健康志向の高い家庭で育ち、日頃から食品の成分表示や食材の品質に気を配っていた。子どもに与える食事や、食事を梱包する容器について学ぶうちに、プラスチックを熱した際に溶け出すBPAなどの化学物質が人体にもたらす悪影響を問題視するようになった。
もうひとつは環境問題への意識だ。キャット・ノーリには、学校に通う3人の子どもがいる。毎朝手作りのサンドイッチを用意し、使い捨てのプラスチック容器に詰めて持たせていたが、そのゴミの行方についても懸念を抱いていた。学校中の子どもたちが、同じような方法でサンドイッチを持参し包装容器を捨てているため、膨大な量のゴミが発生してしまう。その一部は処理されず、海に流されているというのだ。
世界が直面する重大な問題について研究・討論を行う団体「世界経済フォーラム」は、2016年の集会で、2050年の予見を発表している。その内容の一つが、海を漂うプラスチックの量が魚の量を超えてしまうというものだ。これを受けて、世界中でプラスチックゴミを削減するムーブメントが起きている。
洗って繰り返し使えるスタッシャーは、お弁当箱を携帯するという文化がないアメリカにおいて、画期的なアイテムとして注目を集めた。
食品の保存にスタッシャーを取り入れる
スタッシャーの魅力は、エコに貢献できるばかりではない。従来の保存容器を凌駕する実用性を備えていることを強調したい。大きな利点は、洗って繰り返し使えることと、調理のための加熱ができることの2点だ。
行楽日和の日には、手作りのサンドイッチを持って原っぱへ出かけたい。バスケットに入れたお手製のサンドイッチは、どのように梱包するのがベターだろうか。ビニールやアルミホイルでパンをぐるぐる巻きにし、さらにその上から袋や箱を被せている人もいるだろう。スタッシャーの場合は、料理を直接入れて持ち運ぶことが可能だ。もちろん、お弁当箱と同様洗って繰り返し使える。
アメリカでは、あらゆる食品が量り売りで販売されており、昨今、そのムーブメントは日本にも流れ込んできている。現に街では、コーヒー豆ショップやドライフルーツショップなどで量り売りをしているお店を見かける。スタッシャー容器を持っていけば、過剰包装の削減に貢献することができるだろう。
こうして普段のキッチンを振り返ると、無意識のうちにたくさんのゴミを排出していることに改めて気づかされる。しかしそれらのゴミのほとんどは、なくすことが可能なのだ。
調理を効率化するキッチンツールとして
加熱調理ができるのもシリコン製品ならではのメリットだ。
カリフラワーやじゃがいもなどの下処理をする場合、カットした野菜を容器に入れ電子レンジで温めれば、みるみるうちに蒸し野菜が完成する。耐熱温度は250度までのため、家庭用の電子レンジやオーブンを使う分には申し分ない。野菜は茹でることで旨味や栄養がお湯に溶け出してしまうが、蒸し調理ならそれを防げる。
このように、ゴミを減らせるだけでなく調理のサポートまでしてくれるスタッシャーには、多くのファンがついている。ヘビーユーザーの多くがハマっているという使い方が、サラダチキンの調理だ。
容器に鶏胸肉とオリーブオイル、塩を振り入れ、30分から1時間程度湯煎すると、もちもち食感が楽しい、ヘルシーなサラダチキンの完成だ。
保存から加熱までを任せられるスタッシャーの魅力をもっとも感じたのは、作り置きしたスープを食べるときだった。従来なら、密閉性の高いプラスチック容器に一人前をよそい、冷凍庫に保存、食べるときには常温で解凍し、別の容器に移し替え電子レンジであたためるという、2段階の手間を踏んでいたものだ。保存に使ったプラスチック製品は簡単に劣化するので、当然のごとく捨てていた。
スタッシャーを使えば、解凍から加熱までが一工程で済んでしまう。容器の耐冷温度は-18度だから、冷凍にもしっかり対応するし、食べるときは容器ごと加熱ができるので、手間もかからないのだ。
耐久性に優れているところもスタッシャーの魅力だ。実際に洗ってみたところ、容器の隅々にこびりついた汚れを簡単に落とすことができた。ただし、容器内側の乾燥に時間がかかるため、洗浄後ふきんで水気をとったほうが良さそうだ。
保存容器を、ライフスタイルを整える味方にする
食事は生活の土台となる重要なパートである。何をどのように食べるかだけではなく、納得感のある選択をすることも、心地よいライフスタイルには必要ではないだろうか。
普段から自炊を心がける人は作り置きをする機会も多く、保存容器を使う頻度も高い。心から信頼できる保存容器でなければ、せっかく最高の料理を作っても、次に食べるときの喜びが損なわれかねない。
そこに、地球にも人にも優しいスタッシャーがあれば、作り置きした食べ物を、より大きな喜びとともにいただくことができると思う。
忙しい朝は、食事がおろそかになりがちだ。ヘルシーなスムージーを習慣にしようと思っても、毎朝野菜や果物をカットしてビニールで包んで…という工程はいささかストレスだ。その煩雑な作業を、2日に一度、3日に一度に減らせるなら、朝の時間をもっと有効活用できるかもしれない。
今回紹介したスタッシャーは、食材を買うところから、調理、保存まで幅広い領域で食生活をサポートしてくれる。容器の乾燥に時間がかかるなどのデメリットも見られるものの、そのデメリットを背負ってでも使う価値があると感じるのならば、それはより良い食生活に一歩近づいた証だと言える。
家で過ごすことの多いこの時期に、保存容器を見直し、自分にあった製品を選んでみてはいかがだろうか。
スタッシャー
CURATION BY
1993年生まれの編集者・ライター。スパイスとインドを愛し、たまにアジアを旅する。将来はカレー屋さんになるかもしれないし、ならないかもしれない。