2019年10月にリリースされた「KINS(キンズ)」なら、そんな体の違和感を解決に導いてくれるかもしれない。KINSは、体内にいる菌をコントロールすることで体調管理をサポートするサービスだ。
菌と上手に付き合い暮らしの質を引き上げるためのヒントを探る。
菌の状態を数値化し、正しいケアへ導く
その結果低下しうる機能のひとつが、菌の働きだ。菌は、私たちが日々摂取している食べ物の質や生活習慣が悪化することによって減少する。あまり知られていないが、菌は人の体に必要な物質の生成やホルモンの分泌に関与している。そのため菌が減ると、消化器官の機能低下や体臭・口臭のほか、ストレスや睡眠の乱れをも引き起こしてしまう。
日々の生活を通して心身に溜め込んだ負債は、体本来の正常な機能を鈍らせ、日々の小さな不調となって表面に現れているのだ。
低下した菌の働きは、サプリメントや食生活により改善することが可能で、継続すれば薬に頼らずに体調を整えられるようになる。
初回に届くKINS BOXの中には2つのアイテム「KINS SKIN TEST」と「KINS SUPPLEMENTS」が封入されている。
肌表面の菌がもっとも活発化するタイミングが睡眠中であることから、シールを使うのは朝。菌を採集したシールは専用封筒に入れてラボに返送する。
これらの効能をもつ乳酸菌をすべて閉じ込めたのが、KINS SUPPLEMENTS。さまざまな不調に有効な乳酸菌が20種類含まれており、朝晩に1粒ずつ服用する。
KINS代表である下川穣氏の「気軽に相談できる若いドクターとして頼ってほしい」という想いから、相談回数は無制限。
チャットの向こう側にいるのは、AIでも自動シナリオでもない、専門知識を持ったコンシェルジュで、リリースから2ヶ月の現時点ではすべて人力で対応している。
相談内容は日々の過ごし方や食事の内容について。「ストレスに効く夕食メニューを教えて欲しい」など具体的な相談はもちろん、「◯◯は食べてはいけないって本当?」など、ユーザーのちょっとした疑問にも答えてくれる。
菌をケアする習慣を普及させる
このプロダクトが提供するのは、乳酸菌を服用することで得られる直接の効果だけではなく、菌をケアするという習慣。継続して習慣を植え付けていくというミッションがあるからこそ、サブスクリプションにする意味があると感じる。ユーザーの菌に対する意識は、コンシェルジュの支援によって変えられていくのだ。
下川氏は「体内の菌をケアすることが当たり前な世界を実現させたい」と語る。
「クリニックで働いていた頃に読んだ論文の中には、菌の底知れない力についての記述が多くありました。肌や腸のみならず、口、頭皮、膣などあらゆる場所の健康状態を菌が司っていると。人々が菌についてより正しい情報を持ち、自ら菌のケアを実践していくことが大切なのです」
薬局ではさまざまな健康食品や衛生用品が売られていて、印象のいいものを選んでしまいがちだ。何が自分にとって必要で、何をしてはいけないのかという判断軸を持たない私たちは、店頭にある製品を片っ端から試していくしかない。それは非効率であり、健康から遠ざかってしまう可能性すらある。実際、乾燥肌を守るために使い続けていたスキンケア用品に、必要な菌を殺してしまう成分が入っていたという事例もあるそうだ。化粧品売り場では肌のタイプ診断が無料で受けられるし、「乾燥肌向け」「脂性肌向け」など、品揃えも豊富だが、きっとそういう粒度の問題ではないのだろう。
KINS SKIN TESTはユーザーひとりひとりの状態を正確に、継続的に把握することを重視している。菌の採集方法に、シールタイプが選ばれた理由はそこにある。
「肌の常在菌を検査する方法で一般的に用いられているのは、綿棒を使って皮膚の菌を絡め取る方法です。しかしそれでは、綿棒を使う人のさじ加減によって、採集できる菌の数に差が出てしまう。菌の増減を明らかにするためには、同じ面積を対象に検査していく必要があります」
現在の食事はといえば、朝食は玄米、味噌汁、ぬか漬け、焼き魚、発酵食品、ネバネバ野菜を欠かさず食べるという。昼食や夕食も、小麦の少ない食品を選ぶなど配慮を尽くしている。
家族と過ごす休日は自然の多い公園に出かけ、空気中に浮遊する菌と触れ合うことを習慣にしているそう。特に根菜や植物の根っこについた“根圏”と呼ばれる土の層には、とても多様な菌が生息していて、腸内環境によく似ているのだそう。
腸内フローラ、口腔内フローラを専門にドクターとして診療も手がける下川氏がここまで徹底して菌をケアしているとなると説得力が湧いてくる。
「菌の知識を得てライフスタイルを変えると、心も体も変わっていきました。高いモチベーションと冴えた感覚を常に保つことができている気がします。すごく気持ちいいですよ」
KINSが私たちに教えてくれる暮らしのヒント
過去に下川氏が勤めていたクリニックでも、菌を使った治療によって多くの患者が救われてきた。アトピー性皮膚炎や、過敏性腸症候群、花粉症など、対処療法的な治療では治しづらい症例が完治していったのだそう。このような好例を生み出し続けるためにも、菌の可能性を多くの人に伝えていきたいと話す。
「KINSの運営チームは、ユーザーのライフエクスペリエンスを良くしたいという想いを持っています。人が幸せを感じるためには、朝から晩までの体験価値の総和を高めていくことが必要だと思うんです。いまは顔の肌にフォーカスしたサービスのような見せ方をしていますが、一日のライフスタイルをトータルで導くサービスを提供するつもりです」
健康な体づくりをサポートすることは、人の生きがいや幸せに影響を与えるのかもしれない。
振り返れば私は、生まれた瞬間から今まで医療に生かされてきた。衛生管理の行き届いた病院で出生し、さまざまな予防接種を受け、体調を崩したらすぐに薬をもらうことができる、素晴らしい環境で命を守られてきたのだと。
しかし、健康を守るための選択肢はもっと豊富にあってもいいのではないだろうか。健康保険の適用範囲がごく限られた医療にフォーカスされていることを考えても、私たちはまだ自由な選択ができずにいるのではないか。
KINSはテクノロジーを利用して菌の様子をのぞきこみ、活発に働いてもらうための手助けをする試みだ。人が本来備えた力を利用して、体の内側から体調管理をするというアイデアは、自然の摂理にかなっていると感じる。
自分のライフスタイルを急激に変えることは難しくとも、KINSのようなサービスを利用し、まずは菌の底力を体感してみてはいかがだろうか。
photo:Yuki Morita