お気に入りのソファにダイニングテーブル、本棚の上には観葉植物を置いて…。でも、自分らしい部屋にするには何かちょっと物足りない。そんな時おすすめしたいのが「部屋にアートを飾る」こと。とはいえ「アートのある部屋には憧れるけど、購入するとなると価格が…」「どこでどう選べばいいのかわからない」と二の足を踏む人も多いのではないだろうか。そんな不安を拭い去り、初心者でもアートのある暮らしが実現できる「アートのサブスク」を紹介したい。
「アートを気軽に楽しむ」サブスクで身近なアート体験
映画や雑誌などで、壁一面にたくさんの絵を掛けているスタイリッシュな部屋をきっと見たことがあるだろう。ヨーロッパやアメリカなどでは、アートはとても身近な存在。花束を買うように気軽に絵を買い、部屋に飾っている。残念ながら日本では、アートは「鑑賞するもの」であり「購入するのはコレクター」という意識が強く、購入するには気持ちの上でまだまだ敷居が高いのが実情だ。
近年、音楽や映像、書籍をはじめ、ファッション、グルメまでさまざまな分野でサブスクリプションが人気を集めている。そして、アートにもサブスクがあるのをご存じだろうか。定額で好みの絵を借りることができ、自由に交換できる。価格面の魅力はもちろん、もし借りた絵が部屋に合わなくても交換することができる、まさに「アートを気軽に楽しむ」ことができるシステム。そんな画期的なサービスを展開しているのが、京都に本社を置くCasie(かしえ)だ。
「絵を選ぶ」ことで自分らしさを磨く
2019年にアートのサブスクのWebサービスを開始したCasie(かしえ)。アートを通して「自分らしく生きる」をビジョンとしてユーザーを増やしていき、現在では約8,000名の会員数を誇る。Casieは月額2,200円から誰でも気軽に絵画を飾ることができる絵画のサブスクだ。絵の大きさによって3,300円・5,850円とコースを選ぶことができ、最短一か月で自由に作品を交換できる。気に入った絵は購入もできるシステムになっている。
Casieが多くのユーザーに支持されている理由は、何といっても「定期的に絵を選ぶ体験ができる」ということだろう。「アートを飾って自分らしい部屋に」と思っても、アート初心者にとって、いきなり購入する作品を選ぶのはかなりハードルが高い。「どんな絵を選べばいいの…」と及び腰になってしまう人も多のではないだろうか。
Casieはそんな不安を解決してくれるサービスだ。絵は希望すれば毎月交換できるので「普段選ばない色の絵を飾ってみよう」「初めてだけど抽象画を選んでみよう」などと、いろいろな冒険ができる。そうして何度か絵を選んでいるうちに、今まで気づかなかった意外な自分の好みや感情を知ることにもつながる。「アートを選ぶ」という体験は、アートを観る目を養えるだけでなく、自分自身の再発見のきっかけにもなり、「自分らしさ」を磨くことができるのだ。
好きな絵を飾ってアーティストとつながる
Casieのサービスは一般的なサブスクと違って「絵が届いたら飾って終わり」ではない。 Casieから届くのは、アーティストから直接預かった一点ものの作品。ユーザーはアーティストにメッセージを送ることができ、アーティストはユーザーの声を今後の制作の励みやヒントにして成長していく。そしてレンタル料の一部はアーティストに還元される。なかなか機会に恵まれないアーティストにとって、Casieは作品を発表する大切な場所であり、自分の作品を選んでくれた人からの評価に触れられる貴重な機会にもなっている。
つまり、Casieで絵を選ぶということは、単に部屋に絵を飾るだけでなく、アートに対する感性や自分らしさを磨き、知らず知らずのうちにアーティストをサポートすることにもつながるのだ。お気に入りの作家から直接絵を購入する、いわゆる「パトロン」と呼ばれる人々しか経験できないような体験をアートのサブスクで経験でき、ユーザーとアーティストが共に成長していく。これは他にはないCasieの大きな特徴だ。
Casie体験 ー作品を選ぶー
本当に簡単に絵を選ぶことはできるのだろうか。そこで実際にサービスを利用してみた。
絵を選ぶには「自分で選ぶ」方法と「コンシェルジュに提案してもらう」方法がある。Casieのサイトで作品一覧を見てみると、さまざまなテイストの作品がズラリ。ジャンルやカラーで検索できるのだが、アート初心者の私には14,000点もの絵の中から1点を選ぶ自信はとても無いので、今回は「おまかせプラン」でコンジェルジュに提案してもらうことにした。
まず質問フォームで「飾ってみたい絵の色」や「ジャンル」、「飾る場所の壁紙の色」など簡単な質問に答える。飾る予定の部屋の写真を送ることもできる。その他、好みのテイストや避けたい色など自由に記入して送信すれば、コンシェルジュから数点提案してもらえる。もしその中にイメージに合ったものが無ければ再提案してもらうこともできる。
ちなみに私が希望したのは、比較的はっきりしたイメージの抽象的な絵。色はブルー系をリクエストした。どんな絵を提案してもらえるのだろう。数日後、担当コンシェルジュから提案メールが届いた。5点ほど提案してもらっている。おもしろいことに、リクエストしたイメージ通りの絵がある一方で、自分ではあまり選ばないような意表を突いた作品も並んでいた。なるほど気がつかなかったけど、こんな絵も似合いそうだ、などと楽しみながら絵を選んでいく。自分で選ぶのではなく人に提案してもらうという体験はとても新鮮だった。迷った末、今回は当初のイメージどおりの作品に決めたが、次回は全く違ったイメージにしてみよう、などと借りる前から既に楽しみが広がっている。あとは選んだ作品のタイトルと作家名をメールで返信すれば、手続き完了。とても簡単に楽しく絵を選ぶことができた。到着希望日時を指定して、あとは絵の到着を待つばかり。
Casie体験 ー自宅に届く~絵を飾るー
いよいよ選んだ絵が到着。Casieオリジナルの箱に入っている。
画像で確認しているとはいえ、実物はどんなだろうとワクワクする瞬間だ。箱を開けてみよう。
丁寧に梱包された絵の他に、コンシェルジュからのメッセージと絵の紹介、作品の満足度やアーティストへのメッセージを記入する用紙、作品返却時に利用する伝票まで入っている。絵を飾るために必要なフックやピンが絵の大きさや重さに応じて同梱されているのがうれしい。届いた箱は作品交換の時に使用するので保管しておこう。
早速、付属のピンを使って壁に絵を掛けてみる。選んだ絵は額が無いタイプだったので軽く、細いピンとフックが同梱されていた。これなら画鋲の穴程度なので、壁に打ってもほとんど目立たない。絵の裏の紐にフックを掛けると、思ったよりずっと簡単に絵を飾ることができた。
驚いたのは、絵を一枚飾るだけで部屋の雰囲気ががらりと変わったこと。まるで部屋に新たな窓ができたよう。不思議なことに絵を掛けたほうが部屋が広く感じる。もし部屋に飾ってみてイメージが違っても、到着後5日以内に連絡すれば無償で交換してもらえる。こうした情報も、絵の到着前、到着後とサポートメールが届くので安心だ。
作品は、気に入れば続けてレンタルでき、希望すれば購入することもできる。絵を替えたくなったら、ひと月単位で交換することができるので、例えば季節に合わせて絵を掛け替えてもいいし、部屋の模様替えにあわせて替えてもいい。絵を掛け替えるだけで部屋のカーテンを替えるくらい雰囲気が変わるので、ちょっとした模様替えにもぜひおすすめしたい。
今回体験したのはコンシェルジュに作品提案をしてもらう「おまかせで選ぶ」コースだったが、 Casieでは初めてアートを選ぶ人のために、より気軽にアートを楽しんでもらえるよう新たに「スタータープラン」を導入した。最初に「色」「大きさ」「ジャンル」「額の有無」という4つの質問に答えるだけで、Casieで人気のアーティストのおすすめの絵を1点選んで送ってもらえるプランだ。アートのある生活をより多くの人に体験してもらうために、初回の利用料はなんと550円という体験しやすい価格に設定されている。アートにはあまり馴染みがないけれど、ぜひ一度部屋に絵を飾ってみたいという人にはとてもお勧めのプランだ。
自分らしく「アートのある暮らし」を楽しむ
はじめてCasieを利用する人の7割はコンシェルジュに作品を提案してもらう「おまかせコース」を選ぶそうだが、回を重ねるごとに「自分で選ぶ」コースに移行する割合が増えてゆくという。アートに触れていくうちに自然と、アートとの向き合い方が成熟するからなのだろう。
Casieのサービスは「単に部屋に絵を飾って鑑賞して心が豊かになる」だけではない。飾る絵を選んで「アートのある暮らし」を楽しみながら、自分らしさを磨く。そしてそれはアーティストを応援することにもつながる。ぜひ絵画のサブスクCasieで絵を選んで、真の心の豊かさを体験して欲しい。
Casie|かしえ
CURATION BY
美術関連の仕事をしながら、アートライターとして活動。アート三昧の日々を送る。中部・関西のアートイベントに頻繁に出没中。