Vol.789

FOOD

08 SEP 2026

持って帰る、その瞬間から。PAQUET MONTÉで感じるお菓子のときめき

お菓子を選ぶとき、味と同じくらい缶や箱、包み紙に心を奪われることがある。美しいパッケージを眺め、家まで大切に持ち帰り、少し期待しながら包みを開く。その時間もまた、お菓子を楽しむ醍醐味のひとつだ。日本初のフラン・パティシエ専門店「PAQUET MONTÉ」を象徴するのは、紙と紐で仕立てられたピラミッド型のパッケージ。今回はフランのおいしさとともに、包みが生み出すときめきや、お菓子を手にする体験までデザインするものづくりに迫る。

お菓子のパッケージがもたらすときめき

紙と紐でお菓子をピラミッド状に包むパッケージ
これまで、何度も味を知らないままパッケージに惹かれてお菓子を買ったことがある。美しい缶や箱、丁寧に折られた包み紙を見つけると、中に何が入っているのだろうと想像せずにはいられない。誰かへの贈り物を探していたはずが、自分の分まで買ってしまうこともあった。

大切に家まで持ち帰り、きれいに結ばれたリボンや紐をほどく。包みを開くたびに少しずつ中身が近づいてくる時間は、お菓子を口にする瞬間とはまた違った楽しさがある。食べ終えたあとも、気に入った缶や箱は捨てられず、手紙や小物を入れて手元に残してきた。お菓子の記憶は、味だけでなく、それを包んでいたものとともに残っている。

PAQUET MONTÉのフランたち
日本初のフラン・パティシエ専門店「PAQUET MONTÉ」を訪れたときも、最初に目を奪われたのは、紙と紐で仕立てられたピラミッド型の愛らしいパッケージだった。紐を持って歩く時間から、家で包みをほどく瞬間まで、その形は自然と期待を膨らませてくれる。

フランスの日常のおやつ「フラン・パティシエ」とは

フラン液がたっぷり入っている
「フラン・パティシエ」は、卵や牛乳などで作るフラン液をタルト生地やパイ生地などに流し込み、焼き上げたフランスの伝統菓子。現地ではブーランジェリーやパティスリーのショーケースに日常的に並び、子どもから大人まで親しまれている。

フランスでよく見られるのは、大きなホールをカットしたもの。香ばしく焼き込まれた表面と、厚みのあるなめらかなフラン液が特徴で、気取らずに楽しめる身近なおやつだ。プリンやカスタードタルトにも通じる味わいを持ちながら、日本ではまだ知らない人も多い。

そんなフランのおいしさを日本にも届けたい、という思いから誕生したのが、フラン・パティシエ専門店「PAQUET MONTÉ」だ。フランスで親しまれている味わいや食感を大切にしながら、日本でも興味を持ってもらえるよう、多層のパイを筒状に仕立てた独自の形を考案した。

手塩にかけて作られるフランたち
商品コンセプトは「コントラスト」。筒の部分には、バターで生地を包み込む逆折り込み製法「フィユタージュ・アンヴェルセ」、底には練りパイ生地の「ブリゼ」を用いている。アンヴェルセは通常のパイ生地よりもバターの層が多く、焼き上げたときの浮きが高くなるため、サクサクとした軽やかな食感に仕上がるのが特徴だ。この食感を生み出すため、生地の仕込みだけで4日もかけているという。

サクッとほどけるパイと、とろりとしたフラン液。さらに、筒と底には異なる製法のパイ生地を使うことで、一つのお菓子のなかにいくつもの食感を生み出している。

ちなみに、フランスではフラン液にプードル・ア・クレーム(カスタード用のパウダー)を用いるのが一般的だが、PAQUET MONTÉでは使用していない。卵や牛乳をはじめとする厳選した材料を使い、それぞれの素材の味わいを感じられるフランに仕上げているのだ。

工房も併設された代々木にあるPAQUET MONTÉ本店
手がけているのは、シェフパティシエの本田珠美さん。本田さんがフランに親しむようになったのは、洋菓子の世界で働き始めてからのことだそう。仕事で作る機会はなかったものの、本で目にしたり、お菓子店を巡るなかで見つけたりするたびに購入していたという。

住宅地の中にひっそりとかまえられた、隠れ家のような本店
調理の専門学校を卒業後は、個人経営のフランス菓子店で4年、老舗洋菓子店で5年、ホテルのペストリー部門で約4年勤務。ホテルを退職し、次はシェフパティシエを経験したいと考えていた頃、オーナーの鈴江恵子さんと出会い、PAQUET MONTÉを立ち上げた。

ブランド名にもなった、伝統的な包み方「PAQUET MONTÉ」

家に帰る途中。揺れる姿が愛らしい
ブランド名の「PAQUET MONTÉ」とは、紙と紐を使って菓子をピラミッド状に包む、フランスの伝統的な包装方法を指す。かつてはパティスリーなどで用いられていたが、箱や紙袋が一般的になった現在では、本場フランスでもほとんど見かけなくなっているという。

愛らしい見た目をしていながら、折り上げた紙の内側に空間が生まれるため、繊細なパイを押しつぶさずに持ち運べるという利点もある。素材は紙と紐だけという簡素なものだが、実用性と造形の美しさの両方を兼ね備えているのだ。

フランスの日常に根づいたお菓子を、いまでは珍しくなったフランスの包み方で届ける。そこには、味だけを再現するのではなく、菓子を買い、持ち帰り、包みを開き、味わうまでを一つの体験として届けたいというブランドの姿勢が表れている。

色とりどりの季節のフランたち

様々な色は、見ているだけで楽しい
PAQUET MONTÉのショーケースには、定番と季節限定を合わせて、常時3〜5種類ほどのフランが並ぶ。まず味わいたいのが、一番人気の「バニラ」だ。長崎の養鶏場から直送される新鮮で濃厚な卵に、フランス産発酵バターや香り高いバニラビーンズを使用。バニラビーンズは鞘ごと加えられ、ひと口食べると、まろやかな卵のコクと豊かな香りが広がる。

一人で味わうのにちょうどよいサイズ
さらに、ラインナップを彩るのが、旬の果物や野菜を取り入れた季節限定のフランたち。これまでにも、フランボワーズとレモン、いちごと柚子、チョコレートとラズベリー、とうもろこしなど、季節ごとにさまざまな組み合わせが登場してきた。素材の色を生かしたフランは、一つずつ表情が異なり、ショーケースを眺めながら選ぶ時間まで楽しい。

甘さ控えめのフランを、ワインと一緒に楽しむ

野菜を使ったフランをワインとともに
フランと聞くと甘いお菓子を想像するが、PAQUET MONTÉには、とうもろこしやほうれん草など、季節の野菜を使ったフランも並ぶ。今回私が選んだのは、期間限定のとうもろこし。せっかくならいつものティータイムとは違う楽しみ方をしてみようと、よく冷えたワインを合わせた。

口にすると、とうもろこしの自然な甘みが、卵や乳製品のまろやかなコクとともに広がる。お菓子らしい満足感はありながら、甘さは控えめ。パイ生地の香ばしさとほどよい塩気も感じられ、冷たいワインとの相性が思いのほかよかった。

「濃厚な抹茶のフランは、ほうじ茶とも相性がよい」
コーヒーや紅茶と味わう午後のおやつだけでなく、夕食前のアペロや、休日にワインを開ける時間にも似合う。季節の素材を使ったフランは、甘いものと食事の間を自由に行き来しながら、お菓子の楽しみ方を広げてくれる。

自分用にも手土産にも。お菓子を選び、贈る楽しさ

開ける瞬間も心が弾む
華やかなレパートリーと気の利いたパッケージは、プレゼントにもぴったり。相手の好みを思い浮かべながら味を選ぶ時間も含めて、贈る側まで楽しませてくれる。友人宅を訪ねる日の手土産や、ちょっとしたお祝いにはもちろん、ときには自分へのご褒美にも選びたい。お菓子を味わう前から、ときめきに満ちた時間を届けてくれる存在だ。

お菓子のパッケージは、中身を包むためだけのものではない。店で選び、手に提げて持ち帰り、紐をほどく。その一連の時間に期待を生み、お菓子を味わう体験そのものを豊かにしてくれる。

揺れるピラミッド型の包みに心を弾ませ、その日の気分に合うフランを選ぶ。家ではコーヒーや紅茶と、あるいは冷えたワインと楽しみ、誰かに贈るときには、包みを開く喜びまで手渡す。

PAQUET MONTÉが届けてくれるときめきは、フランを口にするよりも前、持って帰るその瞬間から始まっている。

PAQUET MONTÉ

CATEGORY