Vol.5

28 FEB 2019

〔ZOOM in 富ヶ谷〕文化が生まれる町場の酒所「 ウエトミ」

渋谷の中心街から徒歩圏内でありつつ、閑静な街並みが広がる富ヶ谷・八幡・上原エリア。近年は、フレンチの名店や隠れ家的ビストロなどが軒を連ね、グルメな人々から注目を集める土地となった。ただ、そういった店舗に対する憧れがあっても、気になってしまうのはやっぱりお値段。懐事情を考慮すると、普段使いするには「ハードルが高いかも??」と思う方もいらっしゃるだろう。
そこで今回ご紹介したいのが、2017年7月に代々木上原駅近くの「水道通り商店街」にオープンした「煮込みとお惣菜スタンド ウエトミ」である。 “ウエ原”と“トミヶ谷”の間に位置することが店名の由来で、昼の12時から種類豊富なランチ(税込:700円)や、アルコール類を提供している。カフェ感覚で立ち寄れる気軽さで地元の人に愛される、懐深い立ち飲み屋だ。

さまざまなジャンルの食にまつわるイベントを開催しており、「今度、ウエトミで○○が食べられるらしいよ!」なんていう話を人づてに聞くこともしばしばだ。自然体なのに、どこかクリエイティブな匂いが漂う同店。その魅力をお伝えすべく、昼下がりに足を運んでみた。

“ウエ原”と“トミヶ谷”の間に位置する拠り所

“トミ”と書かれた水色の暖簾をくぐると、最初に目に留まったのが天井から吊られた裸電球と壁一面の短冊メニュー。枝豆/切干し大根/ピリ辛メンマetc. オーセンティックな居酒屋つまみの数々に安心する。
“コの字カウンター”がノスタルジックな風情を演出しつつも、店内はモダンで洗練された雰囲気。ドリンクメニューとしては焼酎やサワーに加え、トレンドとして定着したクラフトビールや自然派ワインなどを取りそろえている。懐古主義にとどまらず、現代的なニーズにもバッチリ応えてくれるラインナップだ。

こうしたドリンク類はセルフサービス方式で、店舗スタッフが忙しいときは馴染みのお客さんが一見さんをサポートすることもあるのだとか。キャッシュオンスタイルで、明朗会計なところも嬉しい。
創業メンバーの1人である大野清和さんに代々木八幡という土地について尋ねると、「この辺りは都心にアクセスしやすく、素敵なお店がたくさんある“渋谷の下町”みたいな場所。でも、これまでは普段着で気軽に通えるような飲み屋さんが少なかったんです。それで大衆酒場への憧れから、代々木上原・富ヶ谷界隈の飲み仲間同士で『ウエトミ』をオープンすることに。お店を作るときは肩肘張らない“抜け感”を意識して、老若男女が気軽に会話できるような空間を目指しました」と話してくれた。

確かにここは、近所の人が自然に集えて、日々のアレコレを語り合える拠り所。そして、新しい時代の大衆酒場なのだと感じた。

おひとり様で楽しめるメニューも充実

せっかくお邪魔したからには「いろいろ食べてみたい!」というワケで、はじめに注文したのがおひとり様限定の「ちょいのみセット」(税込:1,000円)だ。

こちらは、“生ビールorサワー+もつ煮込み(小)+お惣菜盛り”を一挙に楽しめるメニュー。かなりお得感のある値段で、店が渋谷区内にあることを忘れてしまいそうになる。
「お惣菜盛り」の内容は日替わりで、取材当日は「チャプチェ」に「大根のから揚げ」、「明太しらたき」という構成。どの料理もおいしかったけれど、特に印象的だったのが「大根のから揚げ」だ。ふろふき大根のようにダシが染みていて、「塩レモンサワー」との相性抜群だった。定番メニューの「もつ煮込み」は、野菜たっぷりでお肉もジューシー。「自宅じゃなかなか作れない味だなぁ……」と、しみじみ感動してしまう。

「気まぐれカレー」(税込:700円)

続いて注文した「気まぐれカレー」(税込:700円)も、店舗を訪れたらぜひ召し上がってもらいたいメニューだ。名前に“気まぐれ”を冠する通り、カレーの種類は日ごとにさまざま。取材日は、大きな鶏肉がゴロッと入った「バターチキンカレー」を提供していた。過去には、山椒キーマカレー/サンマとオクラカレー/ゴボウとオクラの和風納豆カレーなど、ちょっぴり風変りなカレーが登場したこともあるそうだ。
店舗スタッフの大野朋子さんは、「カウンターに立つ人が日によって変わるから、カレーを含めて一部のメニューは日替わり。心がホッと温まるような手作りの料理をお出しできるよう、メンバー全員が心がけています。街の大衆食堂みたいな感覚で、利用してもらえたら嬉しいです」と語ってくれた。

そんな背景から、メンバーの趣味・趣向から生まれたメニューが楽しめるところも魅力的なポイント。韓国料理を研究されているスタッフの中村雪乃さんが作る、「タコのヤンニョム和え」(税込:450円)も絶品だった。

こちらは、イワシを原料とする韓国の魚醤「ミョルチエキス」やトウガラシなどをタコ足と和えたメニュー。うま味と辛味、歯ごたえのある食感が見事にマッチしていて、一度食べ始めると止まらないおいしさ。ビールやマッコリはもちろん、自然派ワインとも相性が良さそうだ。

地方都市や近隣店舗とのコラボイベントを開催

近隣の店舗とコラボレーションして、さまざまなイベントを開催している「ウエトミ」。2019年1月には、山梨県大月市のご当地食材が楽しめる「Love大月」を企画し、「鹿肉とレンズ豆の煮込み」や「桃のプリン」などの素材を生かしたメニューを提供した。
さらに、有名店のフレンチシェフたちが大衆酒場スタイルにアレンジしたガストロノミーを振る舞うイベントや、先ほど登場した雪乃さんが手掛ける、本場で学んだ韓国屋台料理のイベントも好評なのだとか。百貨店が催事を行うような感覚で、“ヒト・モノ・コト”をキュレーションする同店。人々が新しい文化と自然に触れあえる、シェアスペースのような役割も担っているのかもしれない。
もちろん、お昼休みや仕事帰りなどふらりと立ち寄ってみるのもオススメだ。気の利いた料理とアルコールでお腹と心を満たせば、お客さん同士のコミュニケーションが自然と盛り上がるはず。

煮込みとお惣菜スタンド ウエトミ

住所:東京都渋谷区上原1-1-21 山口ビル1F
電話:03-5790-9990
営業時間: 11:30~22:00
定休日:不定休

http://uetomi.tokyo
https://www.instagram.com/uetomi_stand/
https://www.facebook.com/uetomi/

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