Vol.59

MONO

28 AUG 2019

日本人が生まれつき持つ美的感覚を刺激するミニマルバイクとは

最近、「シティバイク」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないか。1818年、ヨーロッパで発明されて以来100年以上「人の移動手段」として重要な役割を担っている自転車。交通手段の一つとして利用する人を日本の街でもよく目にするようになった。シティバイクの世界に、自転車王国であるオランダ独自の思考によりデザインされた「ミニマルバイク」という自転車が誕生したという。
ミニマルバイクとは、自転車として本当に大切な部分だけを残し設計されたシティバイクである。このデザインに対するオランダの考えと日本の考えは共通している部分があるのではないだろうか。

「侘び寂び」という古来より日本人の持つ美的感覚は最小限の構成要素の中で美を追求する考えであり、オランダのミニマルデザインと似た考え方である。自転車に必要な構成部材を極限まで絞り込み、乗り心地の安定感やメンテナンスがシンプルで簡単という利点が加わったミニマルバイクは日本の美的感覚にマッチしたシティバイクと言える。

洗練されたシティバイクにどんな魅力が潜んでいるのか。その正体を見ていきたいと思う。

最小限のデザインで最大限の高級感をもつミニマルバイク

侘び寂びの象徴である「生け花」は花として必要な部分だけを残すことで確実に花びら一枚一枚に栄養素が行き渡るようにし、長持ちさせることに効果をもたらしている。
また、その余分な部分を削ぎ落とすことで、花びらの曲線の柔らかさや茎の力強さが強調されておりその姿こそが花本来の美しさを表現している美とされてきた。実は、この考えはミニマルバイクにも共通している。
自転車として構成する必要最低限の部材だけを残すことで、シンプルな構造を可能にし、故障のリスクを軽減している。移動のための自転車として最近多く利用されている「ロードバイク」は複雑な構造のために、メンテナンスの頻度がどうしても高くなってしまうことが長い間課題とされてきた。しかし、この「ミニマルバイク」は最小限のデザインで構成することで「長持ち」というパフォーマンスを発揮し、先程述べたメンテナンスの頻度という課題を見事乗り越えたデザインとなっている。そして、シンプルだけではない、必要最小限のデザインにしつつもシートピラー(サドル下のフレームパーツ)を太くすることで振動が少なく、安定感のある乗り心地を追求しており、他の自転車にはない、力強く重厚感のある走りを実現している。

「生け花」と「ミニマルバイク」、全く違うものであるように見えるが日本人が昔からもつ美の考え方とオランダのミニマルデザインという考え方二つに共通する”必要最小限のデザインで最大限の美を追求する”という部分を体現しているプロダクトとして重なり合っている。だからこそ、ミニマルバイクは日本人が親しみやすいデザインとなっていると言える。

持ち主に「安心」を与える存在感とは

漆器というものをご存じだろうか。日本の伝統的な工芸品で「侘び寂び」の美の一つとされている。
器などに木の樹液からとれる漆をぬることで器自体のコーティング効果をもたらし、様々な環境に対応できるようになる。漆器はこの漆のおかげで軽い特性を持ちながら割れにくいという耐久性を確立することができるようになった。

実は「ミニマルバイク」にもこのデザインの考えと共通する部分が見える。
シティバイクには一般的にアルミが多く使用されているが、ミニマルバイクに関してはカーボン素材が使用されている。カーボンは他のアルミやステンレスなどの素材に比べ、軽い素材でありながら、サビが起きる可能性が低いという耐久性を持ち合わせた素材である。高価ではあるが、軽くて丈夫という安全面を持ち合わせたカーボンをフレーム部分に贅沢に使用することで、シティバイク自体の軽量化に繋がり、軽やかに走れる安定した乗り心地を感じさせる効果をもたらしている。

カーボン素材ならではのサビにくさやキズがつきにくいという耐久性を活かし、所有者が信頼して、自分の身を預けることができる点、「安心感」を与えるシティバイクがこのミニマルバイクなのである。

引き算の美意識

自転車がヨーロッパで発明される前、日本で移動手段として使われていたものが「人力車」である。
人力車は発明されてから、日本特有の凸凹した土地でも走りやすくするために改良されてきた。馬車からインスピレーションを受けた乗り物でもあったため、当初は多くのフレームをつなぎ合わせることで構成されていた。しかし、人が押す乗り物として軽量化を重視し、必要のないフレームは削ぎ落としつつもタイヤの厚さや押し手の持つフレーム部分の太さを変えることで、より負担のかからない走りやすい乗り物となるよう試行錯誤が施されてきた。

このように日本人にとって、昔からミニマルデザインは生活を豊かにするものとして、デザインの重要な考え方の一つとされていた。人力車同様、ミニマルバイクに関しても、大胆に自転車を構成する要素を最小にすることで、重さ6.7kgという軽量化を実現し、走り出しの重さや風の抵抗をおさえ、加速の速さに結びついている。
自転車本体の重要な骨組みとされるフレーム部分に注目すると、多くの自転車がタイヤやハンドル部分にフレームを何本も渡すことで構成されている。しかし、ミニマルバイクは違う。通常あるはずの前後の車輪を連結させ、乗り手の体重を支える「ダウンチューブ」や漕ぐ部分と後部の車輪をつなぐ「チェーンステー」といったフレームを大胆に削ぎ落とし、その代わり、中央部分を支えるフレームが太くなっており、自転車全体を構成する芯となっている。

「人力車」と「ミニマルバイク」どちらに関しても必要な構成部材は残しつつ、単に削ぎ落とすだけでなく、その最小限の構成する部材の中で使いやすさや快適な乗り心地といった最大限の能力を引き出すことを可能にしたデザインと言える。
新しいシティバイクの姿として現れた「ミニマルバイク」。このデザインを可能にしたミニマルデザインは、日本が古くから持つ「侘び寂び」という美の価値観と大いに共通する部分があるデザイン思考である。オランダと日本それぞれが持つ美の価値観の中で重なりあう部分が見事に表現されたミニマルバイクだからこそ、日本人が持つ「美の触覚」を刺激する親しみやすいシティバイクとなっている。

シームレスなデザインを追求する一方で、その必要最小限の構成部材に関して、素材や太さ、形のデザイン一つ一つにこだわったミニマルバイク。デザインの優美さと乗り心地の安心感を所有者に与えるミニマルバイクは自転車での移動をより豊かな旅体験に変えるシティバイクとなっている。

ミニマルバイクデータ

・10スピード完成車価格:53万円(税抜)
・9スピード完成車価格:51万円(税抜)
・シングルスピード完成車価格:48万円(税抜)
・フレームセット価格:32万円(税抜)
・重量:6.7 kg~

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