アメリカの老舗アウトドアブランドが作り続けるバッグ
アウトドアブームにも後押しされ、その確かな品質で人気を確固たるものにしたL.L.Beanが、「アイスキャリア」として世界で初めてトートバッグを発表したのは、1944年のこと。これが、ボート・アンド・トート・バッグの先祖である。
氷が溶け出し、水になってもすぐに染み出さないよう、生地は24オンス。多くのデニムパンツが大体14オンスくらいなので、その厚みと頑丈さは想像に難くないだろう。重ねて縫われているので、重みにも耐えることができる。
人々の暮らしのために生まれたバッグといっても、大げさではないだろう。「アイスキャリア」は、当時の人々が生きるために必要な大切なものを、壊すことなく、守り、運び続けられる、画期的なバッグだった。
その「アイスキャリア」が、「ボート・アンド・トート・バッグ」として現在のかたちに落ち着いたのは、1960年代。以来アウトドアだけでなく、ファッションの一部として、日常使いするファンも増えた。
驚くべきは、ファッションバッグとして認知された現在も、製造方法は変わらず、当時と同じように手作業でつくられているということ。日常使いだけで考えれば、おそらく、ここまで頑丈でなくてもいいだろう。しかしL.L.Beanは、このバッグがブランドのアイコンであるからこそ、アウトドアに背景を持つ、その不変性を大切にしているという。
アウトドアに磨き抜かれた機能性、使い心地の良さ、そして変わらないものへの安心感。これらが、L.L.Beanの製品が時代を超えて愛される理由なのかもしれない。
27年もののボート・アンド・トート・バッグ
この「Mail Order」、アメリカ本国よりカタログを取り寄せ、そこに付属するハガキでオーダーするというもの。実はL.L.Beanは、100年以上前からカタログ販売に力を入れており、創業年である1912年にはすでにパンフレットの送付を始めていて、1927年には、全米No.1のカタログという評価も受けている。
日本に実店舗がなかった頃、もちろんインターネットも普及していない時代、アウトドアやファッションが好きな日本人もまた、この「Mail Order」を利用して、L.L.Beanの製品をオーダーしていたようだ。
そうして遥々アメリカから、私の名前がサイズごとに異なるフォントで入った2色のトートバッグが、我が家にやってきた。
人生のさまざまな時間を共に過ごした
ミディアムサイズを通学バッグとして使うようになったのは、大学生になった頃から。それ以前の、それこそ流行を気にしていた頃の私にとって、このアイテムはいささか地味に映っていたが、アウトドアファッションブームも相まって使い始めてみると、こんなに通学に適したバッグは他になかった。間口が広いため荷物を整頓しやすく、作りが頑丈なため、重い教科書などにも耐えることができるからだ。原点である「アイスキャリア」の特徴が、日常使いにも生きている気がする。
そして、そのシンプルなデザインは、不変的であるからこそ、普遍的である。世代も性別も、時代さえ問わないようなデザインの懐の深さもまた、このバッグの魅力だと感じる。
私が27年間使ってきて思うのは、このトートバッグは、長い時間を共に過ごすことが出来るプロダクトだということだ。私はこのトートバッグを、何十年後、おばあさんになっても使い続けることができるだろうと、確信している。
流行に左右されず、信頼し、使い続けられるバッグ。親の愛を感じる思い出の品だから、というだけではない、特別な魅力と愛着を、私は自分の人生を以て感じている。
経年変化を楽しむことは、人生を楽しむこと
L.L.Beanのボート・アンド・トート・バッグは、この「worn in」を実現できると、私は思う。使い続けていれば、もちろん色は褪せてくるし、角も破れたりもするけれど、そこには価値が生まれるのだ。
発色のよい原色カラーは、褪せたけれどオンリーワンの色合いになったし、24オンスの分厚い生地は、使用と洗濯とで大分クタっとしてきたけれど、より身体にフィットするようになった。陽にあたり焼けてきた具合も、こなれた印象だ。
ひとつのものを長く使い続けたからこその、スペシャルな見た目と使い心地が、私のボート・アンド・トート・バッグにはある。
その経年変化を楽しむことは、人生を楽しむことに直結する気がする。
もしあなたが今、普段使いのバッグとして流行り物に手を伸ばそうとしているのなら、一度考え直して、L.L.Beanのボート・アンド・トート・バッグを候補に入れてみてはどうだろうか。
それが、大事なプレゼンが終わった記念なのか、初デートの思い出なのか、自分への誕生日プレゼントか、入居祝いか分からないが、10年後、購入時の価格の10倍以上の価値を、きっとあなたに与えてくれるだろう。
これからも、ずっと一緒に
そしてそれだけでなく、節目節目で、新しいボート・アンド・トート・バッグも迎えたい。真新しい24オンスの帆布と、新しい物語をつくるのも良い。
古着屋さんへ行くと、よくL.L.Beanのボート・アンド・トートを目にする。L.L.Beanは、内側のタグでおおよその年代を知ることができるので、その製品がどのくらい昔のものか想像しやすい。私の27年もののトートも、80年代製を示すタグがついており、「ヴィンテージ」と呼ばれ価値が上がってきているもののひとつだ。
セルフヴィンテージの素晴らしさは言うまでもないが、誰かの人生が染み込んだトートバッグに、自分の人生を重ねていくのもまた、素敵なことだと思う。
流行に左右される世の中だからこそ、歴史ある定番ものを取り入れてみてはどうだろう。そしてそれを長く、大切に使う。遠い将来を見据えつつ、ほんの些細な軸を持つことが、ライフスタイルそのものを変えるきっかけになるかもしれない。