あなたは1日のうち、何時間キーボードに向き合っているだろうか。私は職業柄、1日平均して7時間近くパソコンの前に座っている。少年の頃からパソコンを触っているため、ざっと計算して4万時間以上はパソコンと向き合っていることになる。普通の人からしたらこれは多い接触時間かもしれないが、現代人の多くはパソコンを身近な道具として扱っている。思考をアウトプットする道具としては、もはや「紙とペン」よりも身近なものになっているのではないだろうか。おそらく誰しもが次のことが思い浮かぶのではないだろうか、ちょっとした漢字が手書きで書けなかったことが。
キーボードについて考えてみる
こんなにも接する機会の多いパソコンだが、人間が実際に接するキーボードやマウス、モニターなどのインターフェイスの良し悪しが、一般的なこととして語られることは少ない。例えば、「寝具」で考えてみよう。ほとんどの人は、人生の3分の1を寝具の中で過ごしている。そして、一般的に「良い寝具を使うことが良い人生につながる」と捉えられている。では、キーボードはどうだろうか?
わざわざキーボードを買う人はどんな人だろう。タブレット用として?ゲーム専用として?パソコンマニアが?キーボードはパソコンを買ったらついてくるもの、という認識があるかもしれない。だが、私は寝具と同じように、人生の3分の1を共に過ごすもの、として捉えている。そんな人生の時間の多くを接するキーボードに、もっと目を向けてみたいと思う。
なぜ私はHappy Hacking Keyboardなのか
さて、キーボードを人生を共にする相手だと考えたときに、キーボードに求めるものはなんだろう。ひょっとしたら万年筆マニアの方がいれば、通じるところがあるのかもしれない。私の場合キーボードに求めるものは、「打ちやすさ(打鍵感)」「打ち間違いの少なさ」そして、「心地よさ」だ。
心地よさとキーボードは結び付きにくいかもしれないが、7時間もの長い時間、なるべくストレスを少なく、心地よく過ごしていたい。そのため、使っていて気持ちの良い道具を使い続けていたい。
まず、「打ちやすさ(打鍵感)」だが、これは“肩こり”と“作業時間短縮”に直結する。近年では、薄いキーボードが流行しているが多くの場合、跳ね返りが少なく長時間使っていると指先が疲れてくる。また、キーを奥まで押し込まないと入力できない。それを解決するためHappy Hacking Keyboard (以下HHKB)では「静電容量無接点方式」を採用している。詳しくは述べないが、長時間キーボードを打つにあたって疲れにくい仕組みでキーボードを作っている。また、配列や角度にも徹底的にこだわって作りこまれていることが分かる。
次に、打ち間違いの少なさだ。実は私は19年近くappleのMacユーザーだ。カラフルなiMacが出たときからずっとMac製品を使い続けている。当然キーボードもapple製品を使い続けてきたのだが、ジョブズが亡くなってから、実はキーボードが大きく様変わりしている。これはキーボードに限らずだが、どうも人間が使うことを想定した人間中心のプロダクト思想が減ってきているように感じる。この話はまた別の機会に譲ろうと思うが、2018年からapple製品に変わるキーボードを探し続けてきた。いくつかのキーボードを店頭で触り続け、ようやくたどり着いたのがこのHHKBだった。そもそも何故apple製品のキーボードから変えたいと思ったのか。それは劇的に増えた打ち間違いからだった。正直これについては個人差があるため、あくまでも私の場合はということになるが、そんな私が打ち間違いが少ないキーボードとして選んだのがHHKBだ。
そして、大事な心地よさだが、キーボードに関する気持ちよさのファクターは実は2つある。「タイプの音」と「キータッチの感触」だ。タイプの音については下の動画を見ていただきたい。一般的なキーボードの場合、パチパチという音になる。だが、HHKBの場合、まるで高級な自動車のドアを閉めるときの音のような、優しくしっとりとした音色だ。奥行きがある音なので、思考のテンションがさらに上がるようなタイプ音が続く。
【公式】HHKB ASMR -キーボードタイピング音(Keyboard Typing Sounds) Happy Hacking Keyboard Type-S
そして、キータッチの感触については実際に触ってみないと分からないが、感覚としてはやはり高級車のドアを閉めるときの「ソレ」に似ている。キーの押し込みに遊びがあり、また心地よい跳ね返り感があるため、躍動して次のキーを押したくなる感触がHHKBにはある。
思考のスピードでタイプする
キーボードはあくまでも道具だ。パソコンという「想像を生み出す箱」と「人間」をつなぐインターフェイスだ。あなたがアウトプットをする時に一番気持ちよくアウトプットできるやり方はなんだろうか?万年筆?もしくは会話?
万年筆の場合、万年筆と手がキーボードになり、思考がメモ帳に出力される。
会話の場合、声帯がキーボードとなり、それが声として出力される。
コミュニケーションを行う場合、常に何かしらのインターフェイス/デバイスを使用して思考をアウトプットしているのだ。逆に「気持ちよくないアウトプット」とはなんだろうか?
例えば、アプリケーションの立ち上げが遅い場合、あなたはイライラしないだろうか?
例えば、電話で相手の声がよく聞き取れないとき、あなたはイライラしないだろうか?
思考の流れを追ってみよう。思考は、脳から手に命令が行く。次に手からキーボードやペンに命令が行く。そして、モニターや紙に思考が出力される。これが一般的な流れだ。この流れがスムーズであればあるほど、気持ちよくできているらしい。書きやすいペンで気持ち良さを感じるのは、そういったところにもある。逆にアイデアが浮かんでいるのにインクが切れていたり、パソコンがフリーズしたりすると、不快感を感じることだろう。
どうやら人間は、“思考するスピード”と“コミュニケーションのスピード”がずれている場合、ストレスを感じるようになっているらしい。
本題に戻ると、HHKBは、思考を邪魔しないスピードを持っている。それは、元々コンピュータ科学者で東京大学名誉教授の和田英一氏が開発のスタートとなり、プログラマー向けに設計されていることが起因しているかもしれない。タイプミスの少なさ、キーボード配列の妙、手の移動の少なさ、全てがタイプスピードを上げるために設計されている。HHKBを使うとき、思考がスラスラと文字として表現される感覚に陥る。とは、言い過ぎかもしれないが、そう感じさせるプロダクトである。
いかに機能的に働くか
現代人は、常に時間に急かされて生きている。そこからは逃れることはできない。ワークライフバランスが叫ばれているが、仕事は減らない。そんな状況では、いかに機能的に働き、早く仕事を終らせることができるかを考えるだろう。その話、キーボードが大きく関係する?と思われるかもしれないが、私はHHKBにしてタイプミスが減り、タイピングが早くなったと感じている。10分のうちに、5回タイプミスが減ったとしよう。1回のタイプミスで1秒近くは使っているはずだ。その計算だと、私は1日の仕事の中で、3分半の時間を節約できていることになる。一日の時間にすると大した時間ではないが、1年245日働くと考えるとトータルで14時間18分、さらに10年続くと143時間にもなる。キーボード1つだけで、約6日もの時間を生むことになる。
これはキーボードだけに限ったことではない。人は道具に合わせて生きるべきではない。道具を人に合わせていくことが、ストレスフリーの時間を送ることに繋がるのではないだろうか。私は自分が接する時間の中で、長く接するものほど熟考し最適なものを購入するようにしている。
人生に一度のキーボードとの出会いを
このHHKBはキーボードにしては高価だが、筆者のようなワーカホリックにはおすすめしたいプロダクトであることは間違いない。仕事の生産性や創造性を高めることについての努力を厭わない人は、ぜひ一度試してみてほしい。人生の友になれるガジェットとの出会いがあるかもしれない。タッチできる場所があるので、実際にタイプしてその機能性から生み出される気持ちよさに是非触れてみてほしい。
Happy Hacking Keyboard(HHKB)
Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-S ¥32,000 (税抜)
公式サイト:
https://happyhackingkb.com/jp/ショールーム:
https://happyhackingkb.com/jp/showroom/
CURATION BY
人の話を楽しく聞けるプロ八段。国境の島に生まれ、レンタルビデオ屋、雀荘、広告代理店丁稚、偽バーテンと渡り歩き、GOOODCREWという自称日本一かっこいい名刺の会社をやっています。