Vol.546

MONO

10 MAY 2024

自分でリペアできる、サステナブルなビニール傘「EVEREON」

日本特有のビニール傘。別名、使い捨て傘。安価だが壊れやすい、日本では現在、年間約8,000万本が消費され、壊れたらゴミへ。目の当たりにしてきた傘のゴミ問題や、これからの傘の消費について、メーカーとして問題意識を持ち、何度も使えるビニール傘「Evereon(エバーイオン)」を紹介したい。

Evereonの開発秘話

雨の日を鮮やかに彩るEvereon
ビニール傘は味気ない。見た目も安っぽい。だから愛着もなく、何度か使っているうちに壊れては捨てる。また雨が降ると買う。誰のものともわからないものはまとめてゴミへ、極め付けは、想像以上の数の傘ゴミが分別できないものとして、そのまま日本のどこかの地中深くに今でも埋め立てられ続けている。「傘」という、人にやさしいプロダクトが、地球への「凶器」になっている。街中にあふれる壊れた傘の残骸をみながら、もっとみんなが楽しい気持ちで大切に使い続ける仕組みができないかと考えた結果、作られたビニール傘「EVEREON」。株式会社サエラ吉浦聖子氏にEVEREONの開発秘話を伺った。

「安価で耐久性の無い傘が多く普及され『使い捨て』扱いと変わってしまった傘。それらの安価な傘を生産するためには、工場や材料メーカーは品質を犠牲にし、環境に配慮しない廃棄方法をとっているというのが現状です。傘の消費価値を変えていきたい、そして問題に対し傘メーカーとして提言できれば、社会を変えていけるのではないかと考えたのがきっかけです。また、社会問題化しつつあるビニール傘で『耐久性とファッション性を融合させた物を作りたい』という思いで作ったのが2006年に誕生した『Evereon(エバーイオン)』です」

傘のバンドにはEvereonのロゴ
万が一壊れても、生地や部材を取り替えることができるサステナブルな傘。ゴミを削減し「長く大切に使う」傘が増えてほしいという想いが反映されたEvereon。「環境に配慮しているだけでなくデザインの要素もとても大事にしています。傘というのは、持ち歩きの際、邪魔であったりとネガティブに感じる物なので、ネガティブな状況をポジティブに変えていかないと思います。デザイン性があって、持っていて気持ちがいいというのは、傘を選ぶときの第一要素でもあると思います」と吉浦氏は話してくれた。

機能的で特徴あるハンドル

柔軟で強いプラスチック骨

柔軟で強いプラスチック骨
Evereonのカラフルな骨は、見た目の楽しさだけでなく、骨には繊維強化プラスチックを採用しているので、強い風を受け止め、万が一逆さに開いてしまっても、もとに戻して使用しつづけることが可能だ。また、金属パーツを使わずに骨を構成しているため、錆びにくく長持ちする。

ビニール傘といえば無色透明なものを思い浮かべるが、Evereonの傘は多種多様なカラー展開。今回紹介するのは「Evereon 60cm COMBI コンビ SKy」というパープル、ブルー、グリーンの無地のコンビカラーの傘。たたむとはっきり色づき、開くと淡いクリアカラーが美しい。閉じても開いても可愛く、何気ない日常で気持ちを明るくしてくれる。「Evereon 60cm 無地 Black×Clear」は骨組みがブラックでビニール部分は透明だが、ブラックの張替生地で貼り替えるとブラックの骨組みにブラックのビニールの傘が出来上がり、シックな気分で傘を使える。仕事時にも持っていけるのもうれしい。

差すのが楽しくなるカラー使い
その他、肩まですっぽり覆ってくれるバードケージタイプで、アクリルのクリアの手元がポイントの「Evereon 60cm Bird Cage カラフル」や、東京の地図を生地にした「Evereon 張替生地 60cm用アンブレラマップNEW TOKYO」などさまざまな張替生地も展開されている。

Evereon 60cm Bird Cage カラフル

傘を貼り替える

コンパクトなパッケージに入っている生地
Evereonの特徴は、傘生地の張替えができること。傘の生地が破れてしまったとき、季節の変化や気分によっても、張り替えて使うことができる。骨の色と組み合わせることで自分だけのオリジナルの傘をつくることだって可能だ。1本の傘を長く楽しめる工夫がさまざまな部分に施されている。傘の石突(いしづき・先端のパーツ)をなくした場合や気分でホワイトやネイビー、オレンジなど10色からパーツを選ぶこともでき、石突のみを単体で購入することもできる設計となっている。一般的には固定されている石突や生地を簡単に取り外すことができ、修理や部品の交換も可能なため、一度購入すれば、手入れをしながら永く使うことができるのである。

力を入れずに簡単に張り替えられる
「骨のカラーバリエーションが多いのもポイントになっております。生地の張替えが可能な為、違う柄の生地張り自分だけのオリジナル傘として楽しむこともできます」と吉浦氏は話している。機能的で特徴あるハンドルは、ぎゅっとつよく握ったり、雨上がりに持ち運んだり、ちょっと何かにかけたり、立てかけたり。Evereonの特徴あるハンドルのかたちは、傘を利用する様々なシーンに対応するための、機能のあらわれとなっている。

サステナブルな傘

サエラ社はフランス語で「あちらこちら」を意味し、『こちらからあちらへ―現在から未来へ―』というメッセージが込められている。「サエラでは、傘の循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現を目指しております。販売されている、あるいはこれから販売して行く傘が廃棄されることなく、リサイクルが機能する仕組みを課題としています。現在はリサイクルスキームの構築を進めております。傘の循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現は企業だけでは成り立ちません。企業と消費者、共に作り上げて行くものです。今後も皆さんの様々なコミュニケーションの一端として役立てるような傘をご提供する企業でありたいと考えています」と吉浦氏は述べている。

傘=壊れたら捨てるという習慣を減らしていきたい
サエラ社は子ども向けに傘作りキットを用いて、傘の社会問題について考え、傘の構造について学ぶことができるワークショップを定期的に開催。物を大切にする心を育てるためのプロジェクトにも力を入れているという。サエラ社の傘をきっかけにゴミを削減し「長く大切に使う」「使い捨て無い社会」が新しいスタンダードになるように活動続けている。

金属不使用で錆びないため、生地を張り替えれば半永久に使える
生地を張り替えて修理をすること、手入れをして大切に使うこと。それを繰り返すことで愛着が湧き、サステナブルな思考も身についていく。ビニール傘は使い捨てという問題のみならず、置き忘れという問題もあるだろう。それはその傘に愛着がないからつい忘れてしまうから。Evereonを通して自分が持っている一つ一つのモノを大切に、長く使い、少しずつでも起きている社会問題が解決に向かうことを願う。匿名性の高いビニール傘を、自分の傘だという意識と愛着を持って、修理しながら大切に使っていきたい。

ビニール傘を使うのが楽しみに

長く使うための工夫を、たくさん加えたEvereron
「Evereronの傘を通して愛着を持って大切に使う気持ちを持ち続けてほしいという想いがあります」と話す吉浦氏。季節や気分で傘の張替をしながら楽しんで使うことで、ビニール傘の消費構造を変え、モノに対する考え方を変えるきっかけとなるEvereron。梅雨まであと1ヶ月。さまざまなカラーとバリエーションのなかからお気に入りの一本を見つけ、梅雨を楽しんでみてはいかがだろうか。

EVEREON

Evereon 60cm COMBI コンビ ¥2,750 (税込)
Evereon 60cm 無地 ¥2,640 (税込)
Evereon 張替生地 60cm用  無地 ¥990 (税込)

https://www.caetlaltd.co.jp/product/evereon/